最新記事

アフガニスタン

米軍のバグラム空軍基地放棄がテロを世界に拡散させる

2021年8月30日(月)11時41分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

5.8月27日に行われたアメリカの国防総省(ペンタゴン)の記者会見によると、刑務所にはISIS-Kなどのテロ集団を含む数千人の犯罪者がいたが、タリバンが占拠したあと釈放された。バグラム空軍基地放棄とテロリストの釈放との関係に関して、ペンタゴンの報道官は基本的に認めた。しかし人数がどれほどいたのかは言えないとした。

概ね以上だが、念のため、中国の報道が正しいか否かを英文の原情報あるいはその日本語版で確認してみよう。

アメリカ政府やメディアなどの原情報(英文とその日本語情報)

まず、クルーズ議員の発言を見てみよう。

8月28日のNewsweekにTed Cruz Says 'Political' Decision to Close Bagram Air Base Was 'Catastrophic'(テッド・クルーズは、バグラム空軍基地閉鎖の「政治的」決定は「破壊的」だったと語った)という見出しで詳細に書いてある。そこにはクルーズ議員のツイッターもあるので、興味のある方はご覧いただきたい。

実際、7月2日朝までに米軍が誰にも知らせず、こっそりとバグラム空軍基地を去った様子に関してはAP NEWSがUS left Afghan airfield at night, didn't tell new commander(米軍は新司令官には伝えずアフガンの空軍基地を夜間に放棄した)という見出しで報道している。そこには概ね以下のように書かれている。

――アフガニスタン軍関係者によると、アメリカはアフガニスタンのバグラム空軍基地を去る際、電気を止めて夜のうちにそっと立ち去った。アフガニスタン(政府)軍は月曜日(7月2日)に広大な空軍基地を公開し、タリバンを打倒し、9.11同時多発テロの犯人であるアルカイダを追い詰めるというアメリカの戦争の震源地であった場所を、初めて見ることができた。(中略)バグラムの新司令官であるミール・アサドゥラ・コヒスターニ元帥は、「米軍がバグラムを離れるという噂を聞いてはいたが......、>朝7時になって初めて米軍がすでにバグラムを離れてしまっていることを知り、確認した「今年4月中旬にジョー・バイデン大統領が最後の軍を撤退させると発表した後、すぐに多くの基地の引き渡しが進められていた」という。レゲット氏は声明の中で、彼らはアフガニスタンの指導者たちと離脱を調整したと述べている。(中略)アフガニスタン軍の関係者によると、米軍はカブール空港から電話をかけてきて、「我々はカブールの空港にいる」と言い、さらに戦場でタリバンが相次いで勝利しているにもかかわらず、「アフガニスタン国家安全保障・防衛軍が重厚に要塞化された基地を安全に保持できる」と主張した。この飛行場には、約5000人の囚人がいる刑務所もあり、その多くはタリバンとされている。一方、わずかこの2日間で、数百人のアフガン兵が反乱軍(タリバン)と戦うよりも、国境を越えてタジキスタンに逃げ込んだ。(引用ここまで)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中