最新記事

韓国

徴用工訴訟、ソウル地裁の却下判決 韓国法曹会は正反対の判決に動揺広がる

2021年6月17日(木)17時30分
佐々木和義

「韓国の判事ではなく、日本国の判事」だと非難

韓国与党や労働組合は却下を決定した判事を攻撃している。与党・共に民主党の宋永吉(ソン・ヨンギル)代表は、「下級裁判所は、請求権は韓日協定対象ではないと判断した最高裁の判例を尊重しなければならない」「朝鮮総督府京城裁判所判事の判決ではないかと疑ってしまう」と述べ、また判事が「自身の政治的志向と解釈を無理に挿入した」と批判した。

秋美愛前法務部長官も自身のSNSに「判事は主権者である国民の人権を守る判決を下さなければならない」と投稿し、「韓国の判事ではなく、日本国の判事」だと非難した。

二大労働組合連盟の韓国労働組合総連盟と全国民主労働組合総連盟は、強制動員共同行動と記者会見を行なって「判決を受け入れることができない」「日本司法の立場」だと批判した。

ソウル中央地裁が却下を決定した翌8日、青瓦台(大統領府)の国民請願掲示板に、キム・ヤンホ部長判事の弾劾を要求する請願が掲載され、1日で約20万人が同意した。1か月に20万人以上が同意した請願は、青瓦台が回答を出さなければならないことになっている。

一方、判事は良心に従って独立して判断できるよう身分が保証されており、これまで弾劾訴追を受けた判事は1人しないない。

韓国法曹会では相反する判決に動揺が広がるが、法律専門家の間では18年の最高裁の判決に問題があるという見方が多く、原則主義者が多い高裁の二審は、一審と同様の判断が下される可能性が高いという見方が多い。

同14日、原告側が控訴したが、微妙な問題である上、コロナの影響で裁判の遅延が続いており、長期化が予想される。発足以来、反日政策を打ち出して支持を集め、今年に入って日本に対話を求めるようになった文在寅政権。最高裁まで進むことになると、最終判決が下される頃には政権が変わっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

原油先物は下落、米在庫増で需給緩和観測

ワールド

米連邦裁判事13人、コロンビア大出身者の採用拒否 

ビジネス

円安はプラスとマイナスの両面あるが今は物価高騰懸念

ビジネス

米インフレ、目標上回る水準で停滞も FRB当局者が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 6

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中