最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナは2019年9月にはイタリアに広がっていた──新研究

COVID Spread To Europe Months Before China Reported It, Study Claims

2020年11月17日(火)16時50分
ゾーイ・ドレウェット

コロナ第2波に身構えるローマの人々(11月14日) Remo Casilli-REUTERS

<新型コロナウイルス感染症は2019年12月の武漢で最初に報告されたという公式見解が覆れば、このパンデミックの歴史が書き換えられることになる>

イタリアの科学者らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年9月からイタリアで拡散していた可能性があると考えている。この見解は、新型コロナウイルスがこれまで考えられていたよりも数カ月早く、中国国外で広がっていたことを示唆している。

世界保健機関(WHO)によれば、COVID-19と呼ばれる疾病の発生は、2019年12月に中国中部の武漢市で最初に報告された。イタリア最初の感染者は、北部ロンバルディア州のミラノ近郊の町で2020年2月21日に確認された。

だが、ミラノにある国立がん研究所の研究によると、早いものでは2019年9月の血液サンプルから新型コロナウイルスの抗体が検出された。この知見により、「パンデミックのこれまでの経緯が書き換えられる可能性がある」と研究チームは述べている。

学術誌「Tumori Journal」(「Tumori」はイタリア語で「腫瘍」の意味)で発表されたこの研究では、イタリア第一波の中心となったミラノで2019年9月から2020年3月までにがん治験に任意参加した1000人近い人(全員が無症状)の血液サンプルを調べた。

その結果、11%を超えるサンプルで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に特異的な抗体ができていたことがわかった。抗体は、2020年2月よりもかなり前から見られ、2019年9月に採取した血液サンプルでは14%から抗体が検出された。

フランスでも

「この研究結果は、イタリアで最初の感染者が確認される数カ月前、予想外のきわめて早い時期から、無症状者のあいだでSARS-CoV-2が広まっていたことを示している」と研究論文の著者らは書いている。「イタリアでCOVID-19発生が報告される前の無症状者からSARS-CoV-2抗体が検出されたことで、パンデミックのこれまでの経緯が書き換えられる可能性がある」

これまで考えられていたよりも早い時期から新型コロナウイルスが存在していた証拠を科学者が発見したのは、今回が最初ではない。3月にはイタリアの研究者らにより、ロンバルディア州では2019年10〜12月期に報告された重症の肺炎やインフルエンザの症例数が通常より多かったと指摘され、新型コロナウイルスが当時から流行していた可能性が示唆されていた。

5月にはフランスの病院が、欧州で最初の感染者が公式に報告される1カ月ほど前にCovid-19患者を治療していたことを明らかにした。パリ近郊のアビセンヌ病院とジャン・ベルディエ病院で救急蘇生の責任者を務めるイブ・コーエン医師によれば、12月と1月に肺炎の治療を受け、インフルエンザ検査で陰性だった患者24名の古いサンプルについて、科学者が再検査を実施した。そのうち、12月27日にサンプルを採取した患者1名で、COVID-19陽性の結果が出たとコーエンはTVに話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中