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米中対立

瀬戸際の米中関係 文化面の「デカップリング」はアメリカの致命傷に

CULTURAL DECOUPLING BAD FOR U.S.

2020年8月29日(土)14時10分
ミンシン・ペイ(本誌コラムニスト、クレアモント・マッケンナ大学教授)

米紙特派員3人の追放に対し、60人の中国人ジャーナリストを国外追放したのは過剰反応だった。厄介なアメリカ人記者を追放する絶好の口実を、中国側に与えることになったからだ。中国内で取材する有能なアメリカ人ジャーナリストがいなくなれば、アメリカの政治家は中国の内情を探りにくくなるはずだ。

それだけではない。科学技術系の中国人学生がアメリカで博士号を目指す道を閉ざされたら、彼らはアメリカ以外の先進諸国で研鑽を積み、その後はおそらく母国に戻って働くことになるだろう。

今までは、アメリカで博士号を取得した中国人学生の約90%は、少なくとも10年間はアメリカで働いていた。こんなに長くアメリカのために働いてくれる外国人留学生は、ほかにいないのだ。かくしてアメリカでは、せっかく育てた頭脳の流出が起き、中国は育ててもらった頭脳の逆輸入で恩恵を受けることになる。

米中関係は今や崩壊の瀬戸際だ。経済面のデカップリングは既定事実で、このままだと文化面の関係断絶も時間の問題。これは悲劇だ。そして敗者はアメリカだ。

©Project Syndicate

<2020年9月1日号掲載>

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