最新記事

欧州安保

国防総省も寝耳に水、トランプのドイツ駐留米軍削減計画に青ざめるNATO同盟国

Trump's Plan to Pull Troops from Germany 'Massively Disruptive'

2020年6月11日(木)10時00分
ブレンダン・コール

本誌の取材に答えて、ホワイトハウスの報道官は「現時点では発表はないが、最高司令官として、トランプ大統領は米軍の戦力を最も効果的に配置する方法と海外でのプレゼンスについて見直しを続けている」と語った。

「アメリカは、強力な同盟国であるドイツと協力して相互防衛を確実にすること、ならびに他の多くの重要な問題に引き続き全力を注いでいく」

英国のシンクタンク王立国際問題研究所(チャタムハウス)のロシア専門家キール・ジャイルズに言わせれば、この状況は戦略的コミュニケーションの明らかな失敗だ。

「現時点では、きわめて破壊的な行動だ。誰にとっても何のメリットもない」と、ジャイルズは本誌に語った。「あらゆる面で、これは最悪のやり方だ。アメリカが意思決定を行い、実施する能力があるパートナーかどうか、疑わしくなる」

「何が起きているのかがまったくわからず、誰もがハラハラしている。混乱が続く時間が長ければ長いほど、意図的に作り出されたように見える。必ずしも米政権が仕組んだ、ということではない。だが政権内で、論議を巻き起こしたい人物がいるのかもしれない」

ドイツには究極の侮辱

この計画はあまりにも不透明なため、さまざまな憶測を生んでいる。ポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相は、削減した米軍部隊をポーランドに振り向けてほしいという希望を述べたが、それが実現すれば、「ドイツにとっては最悪の侮辱になるだろう」と、米政府の元高官はロイターに語った。

「今回の削減が合理的かつ思慮に富み、十分に検討された計画なのか、それとも聞こえのいいおおよその数字を言ってだけで、それがさまざまな深刻な影響をもたらしているのか。それはドイツ自身の防衛だけでなく、アメリカの活動拠点としてのドイツの役割にも関わってくる」と、ジャイルズは言う。

ドイツ西部のラムシュタイン空軍基地は、米軍の中東とアフガニスタンでの活動にとって極めて重要だ。米軍アフリカ司令部とその欧州支部は、いずれもシュトゥットガルトに本部を置いている。

政治家たちは、今後の軍縮交渉についてロシアとアメリカの間に不確実要素が多いこの時期に、ドイツから米軍の一部を撤退させることは、ロシアに利益をもたらすのではないか、という懸念を表明している。

ガーディアン紙によると、イギリス国防選考委員会のトバイアス・エルウッド委員長(保守党)は、「ドイツの防衛力の向上につながることを期待してNATOを弱体化するのは、ロシアの思うつぼになる危険なゲームだ」と語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中