最新記事

韓国 

韓国ではじまった「ニューノーマル」 コロナ封じ込め成功の要因とこれから

2020年5月8日(金)17時00分
佐々木和義

5月5日にはプロ野球が無観客試合で開幕した...... REUTERS/Kim Hong-Ji

<韓国政府は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため実施してきた「社会的距離の確保」を5月5日に終了した。その成功の要因と、今後の課題は......>

韓国政府は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため実施してきた「社会的距離の確保」を5月5日に終了し、日常生活・経済活動と防疫のバランスを取る「生活防疫」に移行すると発表した。行事や集まりの開催が可能になるなど、社会・経済活動の制限を緩和し、小中高生の登校も決定した。

累計感染者は1万810人、死亡者256人

「社会的距離の確保」の解除に先立つ大型連休、著名な観光地やショッピングモールはマスクを着用した人々で行列ができ、5月5日にはプロ野球が開幕した。視聴率調査会社の調べで216万人が無観客試合を視聴した。5月6日には在宅勤務が解除された会社員が出勤を開始した。

受験を控えた高校3年生は5月13日から、高2生と中3生、小学1、2年生は同20日、高1生、中2生と小学3、4年生は27日からそれぞれ登校し、中1生と小学5、6年生は6月1日から登校する。4月30日から5月5日の大型連休後2週間は状況を見守るべきという専門家の意見を取り入れた措置だが、保護者の育児負担が限界に近づいているという判断から小学生は低学年から順次に登校させることになった。

韓国の新型コロナウイルス感染者は2020年2月18日に新天地大邱教会で確認されたあと一気に拡大した。2月29日には1日だけで909人の感染者が確認され、3月中旬、1日平均100人余りが陽性判定を受けたが、4月20日以降は平均10人未満まで感染者が減少した。5月7日時点の累計感染者は1万810人で、死亡者256人。一方、隔離を解かれた完治者は9千419人となり、隔離治療中の患者は1,135人。累計63万人余りが陰性判定を受け、同時点で8千429人が検査結果を待っている。

SARSやMERSの経験が有効に作用した

韓国で新型コロナウイルスがいちはやく収束した要因として、各国は「ドライブスルー診療所」に注目する。従来方式は感染が疑われる人を1人検査するたびに診療室を消毒する。患者の待機時間が6時間を超えるなど、待機中に感染する懸念も提起された。自家用車に乗ったまま検査を受けるドライブスルー方式は受付から面談、体温測定、検体採取まで10分以内で完結し、待機者同士が接することはない。医療スタッフの保護服やマスク消耗も軽減できるなど検査効率が格段に向上した。

また、感染源の特定に時間がかかると感染者が歩き回ってウイルスが拡散する恐れがあるが、新天地大邱教会から集中的に広がったことも要因としてあげられるだろう。集団感染は感染源の特定が早く、政府は教会関係者に隔離と検査を強制した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中