最新記事

中国

全人代開幕日決定から何が見えるか?

2020年5月2日(土)19時41分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

全人代の会場となる人民大会堂(写真は2019年3月5日、全人代の開幕直前) Thomas Peter-REUTERS

全人代開幕が今月22日となったが、これは決して「一党支配体制だからコロナに勝てた」を象徴していない。全人代の主人公は李克強。コロナ戦から外された習近平は何を恐れ、アフターコロナで何を狙っていくのか?

全人代開幕日が決定されたことに対する位置づけ

4月29日、全人代(全国人民代表大会)常務委員会が栗戦書・全人代常務委員会委員長の主催で開催され、新型コロナの影響で延期されていた2020年の全人代(第13期全人代第3回会議)を5月22日に開幕すると決定した。コロナ感染拡大が収束し、3000人から成る全人代代表(国会議員に相当)が全国から集まり、一つの部屋に密集しても大丈夫という状態にまで来たという証拠であるということは言える。

全人代は改革開放後の1985年に毎年3月に開幕することが定例化し、1998年からは3月5日開幕と決まっていた。なぜ「3月」なのかというと、中国では会計(財政)年度が3月から2月というサイクルで動いているからだ。

したがって5月22日から開幕された場合、財政年度という区切りに基づく政府活動報告に関していびつな形になるため、通年の経済成長率の目標設定はしにくいだろう。また1月23日から武漢封鎖をはじめ多くの企業活動を停止していたので、経済成長はマイナスになっている(-6.8%)。「復工復産」という言葉で表している中国の経済活動復帰は、既に90%以上回復してはいるものの、1年間の経済成長予測を立てるのには一定の困難を伴うだろうことは容易に想像がつく。

4月29日の中国共産党の機関誌「人民日報」の姉妹版「環球時報」は、中国政府の通信社である新華社の通知として以下のように述べている。

――習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、全国的にあらゆる階層の広範な人民群衆の艱難辛苦に耐えた努力により、新型コロナ肺炎に対する戦いは継続的に好転し、経済社会生活は徐々に正常な歩みに戻りつつある。総合的に考えて、第13期全人代第3回会議を開幕する条件は整った。(引用ここまで)

日本のメディアでは全人代開幕を決定したことを、「中国指導部が、ウイルス流行の封じ込め成功に自信を強めていることを明示する動きだ」という時事通信社の「評価」に足並みを揃えて「来月の全人代は、流行をほぼ封じ込めたとする指導部の自信を強調するものになる」と位置付けている。

そうなのだろうか――。

文脈から見て「指導部」は「習近平指導部」あるいは「習近平」自身を指しているように読み取れる。だとすれば、これは中国の真実を何も見ていない「日本的視点」としか言いようがない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中