最新記事

中国

コロナ対応医療関係者への給料3倍:中国は2003年から法制化

2020年4月22日(水)19時53分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

中国でも武漢の最前線で働き続けた若い女医が、武漢の封鎖解除によりようやく故郷に戻り14日間の隔離を終えて幼子に再開しようとしたのだが、過労がたたって隔離から解除される前に心臓マヒを起こして死亡したという例もある。

2020年1月20日

今般の新型コロナウイルス肺炎に関して習近平は1月20日になって、ようやく「重要指示」を出した。おまけにその出し方は「国家衛生健康管理委員会」の指名を受けたハイレベル専門家チームのトップである鍾南山の警告を受けた李克強からの強い要求があった結果だ。その論拠に関しては1月24日のコラム<新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?>や2月10日のコラム<新型肺炎以来、なぜ李克強が習近平より目立つのか?>あるいは3月18日のコラム<中国はなぜコロナ大拡散から抜け出せたのか?>をご覧いただければ明白だろう。

今回の分析の線上で言うならば、更に歴然とした証拠がある。それは習近平が雲南で春節巡りなどをしていた1月20日、「重要指示」を出したその日に、国家衛生健康委員会は「中華人民共和国伝染防治法に基づいて法定伝染病と指定する」という公告を出しているという事実からも読み取ることができる。鍾南山の警告に基づき、習近平が雲南で春節巡りをしている最中に、既に緊急対応が実行に入ったということだ。

封鎖中の医療物資や生活インフラは国有企業が担当

その医療従事者たちが潤滑に救護活動を遂行するためには、医療従事者が用いる防護服やマスクあるいはアルコール消毒液などが不可欠だし、また患者に用いる人口呼吸器なども欠くことができない。

武漢が完全封鎖に入り、湖北のほとんどの地域をはじめとした中国全土が外出禁止にある中、こういった医療物資を誰が生産するのか、また生産されたものをどのような手段で誰が運搬するのかなども問題となる。

それだけではない。食糧問題や電力などのエネルギー供給をどうするのかは死活問題だ。電気など、一秒間たりとも止めるわけにはいかない。

そこで中国では一般の民間企業の活動停止などの指示を出すと同時に、こういった基本的な救助および生活インフラ問題の解決を国有企業が負担し、間断なく提供するという施策を実行した。たとえば3組のローテーションで8時間労働を保ち、体力の限界が来ないようにする一方、こういった業務の従事者にも特別の手当てを給付している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中