最新記事

極超音速ミサイル

中国・ロシアが開発する極超音速機──アメリカは衛星探知網を実現できるか?

2020年1月21日(火)15時15分
秋山文野

現在のミサイル探知システム「SBIRS(Space-based Infrared System)」とよばれ、静止衛星と長楕円軌道の衛星の組み合わせから構成されている。10秒ごとに地球上の熱源を赤外線センサーで検出でき、ミサイルに加えて航空機事故などの熱源も探知できるとされており、2014年のマレーシア航空17便の撃墜を捉えたという。SBIRS機能強化型の後継衛星センサー、OPIRも計画されている。

150515-F-ZZ999-111.JPGSBIRS静止衛星 Photo of SBIRS courtesy of Lockheed

といっても、SBIRSは当初の構想通りに構成されたわけではなかった。SBIRSはもともと、静止衛星を中心とするSBIRS-Highと低軌道の衛星網によるSBIRS-Low、ふたつの組み合わせから構成されることになっていた。

しかし2001年に開発計画が空軍からミサイル防衛局(MDA)に移管され、STSS計画と名を変えて2006年に全24機の衛星打ち上げを開始することになった。実際には、2009年にSTSSの実証衛星2機を打ち上げたものの、衛星網の実現には至っていない。

STSSでの実証を元に、さらに大規模な低軌道衛星網を構築し、HGVの脅威に備えようというのがHBTSSの構想だ。衛星網の規模は数百機に拡大され、HGVを捉えられるセンサーを載せて次々と打ち上げられる。大型の静止衛星では開発に5年、7年とかかるところを小型衛星ならば低コストに次々と衛星を入れ替えることができ、衛星網全体の機能を更新しやすいという目論見だ。

何度も名前を変えて構想されては実現にいたっていない

ミサイル防衛局と共同で衛星網の構築技術を開発している宇宙開発庁(SDA)とDARPAは衛星網全体を2年で更新できるとしており、技術実証衛星を2021年に打ち上げる。2019年10月にノースロップ・グラマン、レイセオン、レイドス、L3ハリスの4社がミサイル防衛局からHBTSS衛星網の開発契約を受注した。2020年秋までには、プロトタイプセンサーの設計が完了する目標だ。

とはいえ、何度も名前を変えて構想されては実現にいたっていない宇宙ベースのミサイル検知網に対して批判は根強い。静止衛星のSBIRSは開発にかかる時間とコストがたびたび問題視されており、商用衛星の技術を取り入れるなどコスト削減策の取り入れに迫られてきた。HBTSSが本当に低コストかつ短期間で構築でき、SBIRS-LowやSTSSの二の舞にならないのか? という冷ややかな視線はまだ消えない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

OECD、世界経済見通し引き上げ 日本は今年0.5

ワールド

ロシア製造業PMI、4月は54.3 3カ月ぶり低水

ビジネス

午後3時のドルは155円半ば、早朝急落後も介入警戒

ビジネス

日経平均は小幅続落、連休前でポジション調整 底堅さ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中