最新記事

テレビ

『セサミストリート』50周年、人種問題を超えたマペットたちは子供番組の革命児だった

After Sesame Street: What’s Next for Children’s TV?

2020年1月22日(水)17時00分
アンジェラ・サントメロ(テレビプロデューサー)

番組を観た子供たちの学習効果がアップ

大学院で発達心理学を専攻した私は子供が絵本や映像にアクティブに反応するのを知っていた。テレビは視聴者を受け身にする媒体だ。

子供がキャラクターに語り掛け、学び、一緒に遊べる番組、子供の思いを受け止め、子供の自信を育てる番組を作ることは可能だろうか。答えはイエス。

媒体が何であれ、考える時間と場を与えれば、子供たちはそこに登場するキャラクターと双方向の関わりを持つ。そんな信念が『ブルーズ・クルーズ』の制作を支えた。

シリーズが放映された10年間に何百万人もの子供たちがホストのスティーブに語り掛け、犬のブルーと一緒に知育ゲームに挑戦した。その後の調査でこの番組を見ていた子供たちは標準テストでより良い成績を上げることが分かった。

効果的だったのは、クイズの答えを出す前に4拍ほど間を置いたこと。その間に子供は与えられた情報を基に自分で答えを考える。教育的な要素に双方向性を持たせ、反復を増やし、語り掛けを長くする。

こうした工夫により、新たなスキルをしっかりと定着させ、学習効果を上げることができた。当時と比べ、今は制作側の技術的な選択肢が増え、膨大な研究調査や番組制作の経験を基に良質の番組を作れる環境が整っている。子供向けのコンテンツは豊富にあり、テレビに限らずモバイル機器でも視聴できる。

一方でアメリカでは人種・民族別の人口構成が変わりつつあり、『セサミストリート』がいち早く取り組み、今も続けている試み、つまり多様性を尊重する番組作りが一層重要になっている。では、今後はどんな子供番組が生まれるだろう。大いに楽しみでもあるが、作り手は気を引き締める必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中