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韓国の自動車が危ない?

2019年12月23日(月)16時30分
佐々木和義

組合員らは什器を破壊し、米ゼネラルモーターズ本社が各国の役員に、安全のため韓国出張を禁止する異例の事態に発展した。深刻な労使対立が一時的に収束した後も組合員は基本給の増額と成果給を要求し、ストライキを継続する。

ゼネラルモーターズは北米の工場を閉鎖するなどグローバルで改革を進めており、2019年8月、米GM海外事業部門のジュリアン・ブリセット社長が韓国DMを訪問し、組合がストを継続するなら生産の一部を他国の工場に移転するなどとして工場閉鎖や撤退を示唆したが、通告を受けた組合は全面ストライキを強行した。

赤字が累積する双龍自動車は韓国政府とメインバンクの産業銀行に借入金の返済延長と新たな資金支援を緊急要請している。

"貴族労組"の現代自動車労働組合は中道・実利派へ

最大手の現代自動車労働組合は逆の変化が訪れている。現代自労組は年俸9000万ウォン(約823万円)が定年まで保証され、納税額は韓国労働者の上位3%以内、賃金10%以内という既得権を得ながらも、増額要求のストを繰り返し、貴族労組と揶揄されている。

その現代自労組が新たな代表に闘争を好まない中道・実利派のイ・サンス氏を選出したのだ。イ氏は投票で49.91%を獲得、強硬派のムン・ヨンムン氏を0.93%の僅差で破り、新代表に就任した。

現在、世界の自動車産業は内燃機関から電気駆動にシフトする過程で、フォード、GM、日産、ホンダ、フォルクスワーゲンなど主要メーカー8社が合わせて8万人規模の人員削減を計画する。現代自労組に現れた変化の兆しは定年まで先が長い30代や40代の組合員が将来の雇用に不安を抱いた結果だろうと専門家は分析する。

外資企業がいつ撤退を表明しても不思議ではない

世界の自動車メーカーが、生き残りをかけて労使が団結するなか、韓国の自動車産業は労働組合に阻まれている。

韓国経済研究院が2019年12月16日に発表した労使紛糾による労働損失日数は、韓国が最も多く、米国の7倍、日本の173倍にのぼっている。労働争議が最も多く発生した英国を1.8倍上回るなど、労組が足かせとなっている。

ルノーサムスン自動車は仏ルノーが株式の70.1%を保有し、19.9%を有するサムスンは両社の提携が終了する2020年に株式の売却を検討している。韓国GMは米ゼネラルモーターズが77%、双龍自動車はインドのマヒンドラが70%を保有するいずれも外資企業である。グローバルな再編でいつ撤退を表明しても不思議ではない。

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