最新記事

中国

北京、動くか 香港デモ

2019年11月18日(月)12時05分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

10月15日に「香港人権民主法案」が米下院で可決した時、中国外交部は、「もしこの法案が成立した時には、中国政府は断固とした報復措置を実行する」と宣言していた。「その宣言を実行に移すぞ」と、アメリカに警告したのが、習近平のこの発言であったと位置づけることができる。

中国は香港デモの背後にはアメリカがいるとみなしている

習近平のBRICS会議における前述の発言の中にも「如何なる外部勢力も香港の業務に干渉することを許さないという決意も揺らぐことは絶対にない」という言葉があるように、中国は香港デモの首謀者はアメリカであると強く主張している。

今年8月15日のCCTV国際オンラインでも「香港暴力動乱の背後に"アメリカ勢力"」という報道をしている。この手の報道は何度も繰り返されており、ここに挙げたのは、その一例に過ぎない。記事の詳細をご紹介するのは又の機会にしたいが、要はデモのリーダーや背後で操っている民主派長老たちがペンス副大統領やポンペオ国務長官、あるいはその当時の(まだ解任されていなかった時の)ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)などと会っているとして、その証拠写真などを数多く報道してきた(詳細な説明は長くなるので省略する)。

また別の切り口から、たとえば8月27日付の中国経済網は「央視(CCTV):なぜ香港の暴力動乱には、いつもアメリカ国旗が出現するのか?」という見出しで、背後にアメリカがいることを盛んに報道している。この報道の3番目の写真に出て来る「美国(=米国)国家民主基金会」こそが、あの名だたる全米民主主義基金(National Endowment for Democracy)すなわち「NED」(民主主義のための全国基金)なのである。

この基金がなければ、なぜ「貧富の格差にあえいでいる」とされる香港の若者たちが、あれだけ長期間にわたってデモを続けることができるのかというのが、中国側の主張の一つだ。その資金はどこから来ているのか、働かなくても収入が途絶えることなく豊富な支援物資が次から次へと補給されているのはなぜかと、中国のメディアは反米一色に染まっている。

そしてアメリカの目的は「人民元の国際化を阻止するため」だと、中国の知識人や学者たちは分析している。彼らによれば、だからこそ、中国はグレーターベイエリア戦略を促進しているのだということだが、米中貿易戦争は今や金融戦争へと突き進み、その根幹はハイテク戦争にあるので、香港が狙われているのは、その一環だと分析している。

「2019年、年次報告書」も中国のハイテク技術を警戒

米中経済安全保障再考委員会の「2019年、年次報告書」も、「中国のハイテク技術が米国の安保上のリスクになる」と警告している「5GやIoTなどで中国が国際標準を握れば、アメリカのデータが吸い取られる」と述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国人民銀、住宅ローン金利と頭金比率の引き下げを発

ワールド

米の低炭素エネルギー投資1兆ドル減、トランプ氏勝利

ワールド

パレスチナ自治政府のアッバス議長、アラブ諸国に支援

ワールド

中国、地方政府に「妥当な」価格での住宅購入を認める
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中