最新記事

感染症

台風の後、犬を外に出すのは少し待ったほうがいいかもしれない、その理由は?

2019年10月21日(月)16時45分
秋山文野

<台風19号が去った後、犬たちを外へ出すもう少し待ったほうがよいかもしれない。犬と飼い主の双方に関係する感染症に気をつけたい......>

「#犬をしまえ」ハッシュタグが急上昇

西日本から北日本にかけて、巨大な勢力で日本の広範囲に雨風をもたらし、多数の河川の増水を引き起こした台風19号(ハギビス)。日本への接近、上陸に備えて多くの人が準備に追われていた2019年10月8日から11日ごろ、「#犬をしまえ」というハッシュタグがTwitterを中心に急上昇した。

普段は屋外で飼育されている犬であっても、台風という過酷な環境にさらすことは危なくてできない。強風で犬小屋などが破壊される恐れや浸水で逃げられないまま水没してしまうようなことがないように、家族の一員である犬を屋内へあらかじめ避難させておこう、という趣旨だ。「#猫をしまえ」といった派生ハッシュタグも現れ、改めて屋内飼育のメリットもクローズアップされた。

台風19号が去った後も雨が続き、台風20号も発生する中で「しまった」犬たちをいつ外へ出すか悩む家庭もあるだろう。だが、もう少し待ったほうがよいかもしれない。台風の影響には、後から来るもの、しかも犬と飼い主の双方に関係するものがあるからだ。

台風の後、レプトスピラ感染症に注意

2011年秋、三重県で台風の大雨後に畑で後片付けをしていた男性が風邪のような症状を発症した。38度以上の熱、筋肉痛や腹痛、血管内に無数の血栓ができる症状や血圧低下、黄疸、腎機能障害など重篤な症状が続き、「レプトスピラ症」と診断された。

レプトスピラ症とは、ネズミなどの尿を通じて感染する病原性の細菌「レプトスピラ」による感染症のことだ。レプトスピラは多くの哺乳動物の腎臓に保菌されており、尿の中で生存する期間は短いが、汚染された水や湿った土壌の中では数ヶ月生存する可能性がある。ネズミの尿で汚染された湿った土に接触すると感染する可能性があるということになる。

人へは農作業や、川や池で泳ぐなど水辺のレジャーで感染するリスクが指摘されている。粘膜や傷口から感染するため、体に擦り傷などがある状態で汚れた水に接触したり泳ぐといった行為は避けたほうがよい。台風や豪雨災害の後には、やむを得ず浸水した地域を歩くなど意図せずに汚れた水に浸かってしまう可能性もあり、破傷風やレジオネラ症と並んで注意すべき感染症として挙げられている。

今年はシドニーで感染が急増

レプトスピラ症は人畜共通感染症のひとつであり、人だけでなく動物に感染する。東南アジアを始め世界の多くの国々で感染が報告されている。都市部で発生した直近の例では、2019年の7月にオーストラリアのシドニーで犬へのレプトスピラ症の感染が発生、急増した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ポーランドのトゥスク首相に脅迫、スロバキア首相暗殺

ビジネス

フォード、EV収益性改善に向けサプライヤーにコスト

ワールド

米、大麻規制緩和案を発表 医療用など使用拡大も

ビジネス

資本への悪影響など考えBBVAの買収提案を拒否=サ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中