最新記事

事件

韓国訪問中に消えた9人のベトナム外交団員 公安当局が捜索要請

2019年10月17日(木)20時15分
チュック・グェン(フリーライター)

2018年12月4日、ベトナムのグエン・ティ・キム・ガン国会議長を団長とするメンバーが韓国を訪れたが…… 韓国メディアの報道より

<かつては戦火を交えた両国だが、今では韓国にとってベトナムは貿易輸出で第3位となり、密接な関係を築いている。そんな両国関係に水を差すような事件が発覚した>

韓国を公式訪問したベトナム国会外交団のメンバーが、韓国滞在中に行方不明となり、現在ベトナム公安当局が韓国に対し、行方不明者の捜索と送還を求めていることが明らかになった。

これは9月に韓国メディアが報じたことを受ける形で、ベトナム側が事実関係を一部訂正しながらも事件を認めたことで明らかになった。

このベトナム国会外交団は2018年12月4日から7日まで韓国を公式訪問した。一行はベトナムのグエン・ティ・キム・ガン国会議長を団長とするメンバーで、韓国のムン・ヒサン国会議長の招待で韓国を訪れ、貿易投資促進フォーラム(ベトナム計画投資庁、韓国商工会議所、在ベトナム韓国大使館などが開催)に参加した。

同フォーラムにはベトナム、韓国両国から約300の企業が参加、ベトナム側は44企業72人が参加したという。

ところが訪問から1年近く経った2019年9月23日になって韓国のメディアが「ベトナム代表団の9人が韓国滞在中に失踪していたことがわかった」と報じた。それまで一切報道がなかったのはベトナム政府と韓国政府の間で「報道発表自粛措置」が取られたためとみられている。

「失踪したのは外交団メンバーではない」

韓国での報道を受けてソーシャルメディアなどで情報が拡散したことからベトナム政府も9月25日にグエン・ハン・フック国会書記長がベトナムのメディアに対して「失踪したベトナム人は国会議長の率いた国会外交団のメンバーではない。韓国での貿易投資促進ファーラムに参加した企業の幹部である。政府は彼らを韓国に向かう外交団が搭乗する専用機に同乗できるように手配しただけで、韓国へは外交ビザで入国した訳ではない」と発表。外交団ではないとしながらも、同行したベトナム人が韓国で失踪している事実を間接的に認めた。

失踪した9人を含めたベトナム企業の幹部参加者の選定や韓国での宿泊先などの手配をしたのはベトナム計画投資省だったという。

フック国会書記長は当時の状況について、韓国での日程を終えて航空機でベトナムに出発しようとしていた時に「代表団9人のメンバーの行方が分からなくなっていることがわかったが、離陸時間が迫っていたので待てなかった」という。

そのうえで「国会事務局として公安省に対して失踪したメンバーを発見してベトナムに移送するように関係者や韓国当局と調整を急ぐよう要請している」と述べ、「失踪者のベトナム人に対してはベトナムの法律に従って捜査をして厳密に対応する」と、断固とした姿勢を示している。

これまでの韓国での報道などによると、失踪した9人のベトナム人のうち1人が2019年初めに韓国当局に出頭しベトナム帰還を求めたことで、韓国当局が「失踪事件」を正式に認知したという。その後さらにもう一人のベトナム人が身柄を確保され、ベトナムに強制送還されており、現在も行方不明なのは7人となっている。


20191022issue_cover200.jpg ※10月22日号(10月16日発売)は、「AI vs. 癌」特集。ゲノム解析+人工知能が「人類の天敵」である癌を克服する日は近い。プレシジョン・メディシン(精密医療)の導入は今、どこまで進んでいるか。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア軍の上陸艇を撃破...夜間攻撃の一部始終

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 6

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中