最新記事

台湾

台湾は民主を守れるか――カギを握るのは若者

2019年9月27日(金)10時47分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

ちなみに台北駐日経済文化代表処の情報によれば、台湾の有権者年齢別の人口構成は以下のようになっている。

 20-29歳:315万5,699人

 30-39歳:366万5,288人

 40-49歳:369万9,417人

 50-59歳:363万7,318人

 60-69歳:290万8,508人

 70-79歳:132万3,227人

 80-89歳:65万4,803人

 90歳以上:13万722人

  (Taiwan Today:2018年11月23日)

選挙民の平均年齢は40.41歳(2016年12月末統計)と、ちょうど40歳だ。なお、統一地方選挙の選挙権年齢は20歳からだが、公民投票に関しては今後18歳に引き下げられるそうだ。

問題は実際の投票行動だ。若者はネットではすぐに意思表示するが、果たして投票場まで行くかというと、必ずしもそういうわけではない。

郭台銘を不出馬に追い込んだ嫌中ムード

しかし、台湾経済を復興させてくれるのではないかと期待が集まった郭台銘は、あまりに習近平に近すぎることから、不出馬にまで追い込まれている。彼が最初に総統選出馬の意思を表明した4月では、世界の注目が集まり、大きな変化が起きるのではないかと少なからぬ者が期待した。

ただ今年元旦に習近平が「台湾同胞に告ぐ」講和の中で、「92コンセンサス」から一歩踏み込んで台湾にも「一国二制度」を実行すると表明したことから、台湾の大陸に対する警戒と批判が高まっていた。そのような中で国民党に入党した郭台銘は北京に近すぎることから支持率が上がらず、5月1日には訪米してトランプ大統領に会っている。中華民国の国旗のワッペンを帽子に縫い付けたりなどのパフォーマンスを見せたが、支持率は上がっていない(トランプとの会談に関しては5月5日付コラム「トランプ大統領と会談した郭台銘・次期台湾総統候補の狙い」に書いた)。

結果、7月15日の党内予備選で韓国諭に敗れ、9月12日に国民党を離党した。

そんなことくらいでは人気の回復ができないほど、庶民の心は大陸(北京政府)から離れている。

香港デモを見て、非常な危機を感じているのだ。

習近平の「台湾同胞に告ぐ」講和は、裏目に出たのではないだろうか。

逃亡犯条例改正案を水面下で香港政府に勧めた狙いも裏目に出ている。

となれば、香港の若者だけでなく、台湾の若者もここで奮起するかもしれない。その志に期待したい。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

endo2025.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ホンダ、電動化とソフトへ投資倍増 30年度までに1

ワールド

中国、生産能力過剰論に反論 米欧の「露骨な貿易保護

ワールド

ウクライナが米欧を戦争に巻き込む恐れ、プーチン氏側

ビジネス

商業用不動産、ユーロ圏金融システムの弱点=ECB金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中