最新記事

中国

中国、香港デモ参加者大量逮捕の手に出るか

2019年8月20日(火)06時30分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

香港「逃亡犯条例」改正巡り170万人が大規模デモ Aly Song-REUTERS

18日、デモが平和裏に進行したのは北京の罠に嵌るまいと判断したからか。中国中央テレビ局CCTVは「法と正義の名において審判を下す」という旨の報道をした。これが何を意味するのか中国政府元高官に聞いた。

香港、平和裏に170万人がデモ参加

8月18日、香港では主催者側発表で170万人がデモに参加した。デモは市街地を行進する許可は得られなかったものの、ヴィクトリア・パークでの集会は香港警察から認められた。しかし参加者が多くて他の地域に溢れ、結局はデモ行進となったのだが、雨の中行進する参加者は平和裏に抗議の意思を表明することを貫いている。

これまでデモ参加者と警察との間で激しい衝突が繰り返されてきたことを思うと、その大きな変化に驚かされる。

8月15日付のコラム「変装香港デモ隊が暴力を煽る――テロ指定をしたい北京」に書いたように、北京政府は何としても香港の抗議デモに対して「テロ行為だ」というレッテルを貼りたくてならなかった。そうすれば軍を出動させても国際社会の非難を浴びなくて済むだろうと計算していたからだ。

そのために変装警察官まで出動させたことを香港警察は認めている(8月12日の香港警務処のトウ炳強・副処長による記者会見で)。

但し、暴力行為を煽るためではなく、あくまでも「おとり捜査」のためだと弁明しているが、変装者を潜り込ませて暴力を煽った事実はデモ参加者たちの間では共通認識となっていたに違いない。

筆者自身は15日のコラムの最後に「香港の若者たちが、どうかこの策謀にはまらないよう願うばかりだ」と祈るような気持ちで書いたのだが、18日のデモでは、まるでその祈りが届いたかのように平和裏にデモを進めてくれたことに安堵し、深い感慨を覚えた。

法と正義の審判を下す

ところがその日、中国の中央テレビ局CCTVは「反暴力の主流世論には逆らえない」という番組を繰り返し報道した。

その番組は概ね以下のように述べている。

――香港の一部の過激派が暴徒となって香港の社会秩序を破壊し尽くしたが、(デモに参加していない)香港の一般市民は過激派の暴挙を許さない。連日来、産業界や商業金融界、あるいは教育界や芸術界の関係者などが声を上げ始め、「反暴力の主流世論」を明確に打ち出し始めた。香港社会の善良な英知が、もはや黙っていることはなく、暴力に対して「ノー」と叫び始めたのである。反暴力は広大な香港同胞の願いであるだけでなく、14億の中国人の一致した願いだ。暴徒たちの末路はもう見えている。あなた方を待っているのは「法と正義の審判」のみであることを思い知らなければならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中