最新記事

人権問題

プラユット首相続投でタイ軍政が言論統制強化 反体制活動家らが謎の失踪や殺害

2019年6月7日(金)17時45分
大塚智彦(PanAsiaNews)

総選挙で政権を守ったプラユット首相は、さらなる言論統制強化をするのか Athit Perawongmetha - REUTERS

<軍事政権から民政移行のために行われたタイ総選挙では、大方の予想に反して親軍勢力が得票を伸ばし、民政とは名ばかりの実質的に軍政継続となった。そんななか、反体制活動家への締め付けが強まって──>

ワチラロンコン新国王の戴冠式(5月4〜6日)という一大国家行事のために延び延びになっていたが、総選挙(3月24日)で軍政を率いていたプラユット氏の首相続投が6月5日にやっと正式に決定し、新体制による政治が進み始めようとしているタイ。だがその裏では昨年末から反王政、反軍政の活動家や評論家の行方不明や殺害事件が相次ぎ、政府による言論統制がさらに厳しくなっている。

国際人権団体の「アムネスティ・インターナショナル」などが明らかにしたところによると、タイ王室などを批判して不敬罪容疑が持たれていたタイ人活動家など3人が滞在先のベトナムで身柄を拘束されて以後消息不明になっているという。

ベトナムの首都ハノイで身柄を拘束されたのはチューチープ・チワスット氏、シアム・ティラウット氏、クリシャナ・タプチャイ氏の3人で、不法入国と不法滞在、資格外活動の容疑でベトナム当局に身柄を拘束され、5月8日に身柄をタイに引き渡されたと人権団体などは指摘している。

しかし3人の消息はその後途絶えており、5月10日の米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)ネット版」によるとタイのプラウィット副首相はタイ当局による3人の身柄拘束に関して「なんら報告を受けていない。情報はネットで知っているが、この問題は外務省や警察が確認するだろう」と述べるにとどまったという。一方、外務省報道官はRFAに対して「全く知らない」と回答したとしており、依然として3人の消息は不明のままという。

チューチープ氏は「サナム・ルアンおじさん」の名前でも知られ、ハノイを拠点に週2回インターネット経由で放送される反体制放送局のDJを務めていた。他の2人もチューチープ氏の仲間で反王政、反軍政の評論活動を続けていた。ネット上の放送は1月28日を最後にその後は途絶えているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中