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人口激減時代を迎える日本で、上がらない労働効率

2019年4月24日(水)15時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

2050年には生産人口が総人口の半分以下になるが、それはどのような状態なのか。仕事の多くはAIやロボットに委ねられているかもしれない。しかし現状はそうしたユートピアからはほど遠く、社会を回すには人間が働かないとならないはずだが、人々の「労働量」は国によって違いがある。

労働量とは、働いている人の数と労働時間の掛け算で算出される。これを人口で割れば、どれくらいの労働量で社会を回しているかという指標になる。11の国について3つの要素を揃え、人口あたりの労働量を試算してみた<表1>。

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日本は就業者が約6500万人で、週の平均就業時間は39時間だ。就業時間が短い印象を受けるかもしれないが、これは女性や高齢者も含めた全就業者の数値だからだ。両者の積の労働量(a×b)によって1億2800万人ほどの人口(c)を養っている。人口あたりの労働量は19.7となる。

ヨーロッパ諸国では、日本よりも少ない労働量で社会を回している。ICT(情報通信技術)化が進んだ北欧諸国で、人口あたりの労働量が少ないのは頷ける。最も低いフランスは、一週間無休で営業したパン屋が罰せられるような国だ。それでも社会は回る。対して日本、韓国、ベトナムといったアジア諸国は効率の悪さが目につく。

どれほどの労働量で社会を回しているかは、GDPのような経済指標とは違った「豊かさ」の指標と読める。人口減少の時代では、こちらの効率性を高めていく必要がある。外国人材の受け入れ拡充(労働力増加)が決まったが、働き方の質を変える余地は多分にある(ICT化の遅れ、無駄な会議、長時間の「痛勤」地獄、過剰サービスなど)。働き方改革推進法が施行され、24時間営業の短縮、無人店舗の導入、玄関置きの宅配便なども始まってきた。

20世紀型の人海戦術で国際競争をしのぐのではなく、働き方の質を変えないといけない。その意識改革が最も求められるのは学校だ。未来を担う子どもたちには、未来型の働き方のモデルを示す必要がある。

<資料:総務省統計局『世界の統計 2019』
    UN「World Population Prospects 2017」
    ILO「ILOSTAT」

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