最新記事

ロシア疑惑

モラー米特別検察官、トランプとロシアの共謀を認定せず

2019年3月25日(月)13時12分

バー米司法長官は2016年米大統領選へのロシア介入疑惑を巡る捜査でモラー特別検察官がトランプ陣営とロシアの共謀を認定しなかったと明らかにした。長官はまた、トランプ大統領(写真)は捜査の過程で司法妨害を行わなかったと断定した(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)

バー米司法長官は24日、2016年米大統領選へのロシア介入疑惑を巡る捜査でモラー特別検察官がトランプ陣営とロシアの共謀を認定しなかったことを明らかにした。長官はまた、トランプ大統領は捜査の過程で司法妨害を行わなかったと断定した。

捜査報告書の概要では、「ロシアに関係がある人物らによる複数の提案」があったにもかかわらず、トランプ陣営が「ロシア政府と共謀したり、連携したりした証拠は見つからなかった」としている。

モラー特別検察官は、トランプ大統領による司法妨害の可能性について含みを残した上で司法長官に判断を委ねたが、バー長官は「大統領が司法妨害罪を犯したと立証するには証拠不十分」と結論付けた。

バー氏によると、モラー氏は報告書で司法妨害の可能性について「大統領が罪を犯したと結論付けてはいないが、潔白を証明してもいない」と記したという。「大統領の行動や意向を妨害と見なすことが可能かどうかに関する法律や事実の『難しい問題』」を指摘し、司法妨害に該当するかどうか結論を出すことを控えたという。

バー長官は議員らに書簡を送り、「妨害行為に相当し、係争中あるいは検討されている訴訟と関連があり、不正な意図を伴うような行動は、合理的な疑問を残さない程度の証明が必要だが、報告書ではそのような行動は特定されなかったと判断した」と説明した。

ホワイトハウスのサンダース報道官は捜査の結論について、「大統領にとって完全な無罪証明だ」と述べた。

一方、民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務は、司法妨害に関する大統領の無罪が証明されていないことを踏まえると、「報告書の全容および基礎となる書類を直ちに公開することが急務だ」とする共同声明を発表した。

上院情報特別委員会のリチャード・バー委員長(共和党)は、バー司法長官は報告書の内容について可能な限り公表すべきとの立場を示した。

トランプ大統領はワシントンに戻る大統領専用機に搭乗する前、記者団に「米国でこのような調査が行われたのは残念だ」と述べた。「これは違法な試みで、失敗に終わった」とした。

トランプ氏はこれまでロシア疑惑の捜査を「魔女狩り」と呼び、自身はその被害者だと繰り返し訴えてきた。報告書はその主張の正当性を強調するための材料となるが、報告書の全容の開示を求める民主党との間では対立が深まる見込みだ。

[ワシントン 24日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240514issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月14日号(5月8日発売)は「岸田のホンネ」特集。金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口……岸田文雄首相が本誌単独取材で語った「転換点の日本」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー

ワールド

焦点:中国農村住民の過酷な老後、わずかな年金で死ぬ

ワールド

アングル:殺人や恐喝は時代遅れ、知能犯罪に転向する
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中