腸内フローラをAIで解析して実年齢を推定──老化や病気の予測に活用できるかも
腸内フローラをAIで解析して実年齢を予測できた Dr_Microbe-iStock
<健康な人の腸内フローラを人工知能(AI)で解析して実年齢を予測できた、という研究成果が発表された。腸内フローラと老化の研究は進むのか>
人間の大腸には1000種類、40兆個を超える細菌の集団「腸内細菌叢(腸内フローラ)」が住み着いている。腸内フローラを構成する細菌の種類は年齢によって変わるため、成長や老化と何らかの関係があると考えられている。
しかし、腸内フローラは個人差が大きく、老化との関係を知るにも、何をもって「普通の腸内フローラ」とするのかすら定まっていない。そこで、ある研究グループが、「健康な人の腸内フローラを人工知能(AI)で解析して実年齢を予測できた」と発表した。腸内フローラと老化の研究は進むのか。
腸内フローラは年齢で変わる
「腸内フローラから実年齢を予測できた」ことのインパクトを受け止めるために、前提として「腸内フローラは年齢で変わる」ことを知っておこう。
腸内フローラは、誕生直後から幼児期にかけて劇的に変わり、その後ある程度安定するが、高齢になるとまた変化する傾向にある。リンク先の3ページのグラフがわかりやすい。
・日本人における加齢に伴う腸内細菌叢の変化を確認~科学雑誌『BMC microbiology』(5月25日)掲載のご報告~(森永乳業)
生まれたては大腸菌や腸球菌という種類の細菌がいるが、わずか数日でビフィズス菌が大半を占めるようになる。母乳やミルクを与えることで、これらに含まれるオリゴ糖を消化できるビフィズス菌が生き残りやすくなるためだ。
そして、離乳が始まって食べるものが大きく変わるとビフィズス菌は減り、やがて「バクテロイデーテス門」と「ファーミキューテス門」という分類に属する細菌がほとんどとなる。この傾向は成人期まで続く。
ところが、60歳を過ぎるころから「プロテオバクテリア門」に属する細菌が増え始める。味覚や咀嚼機能の低下などによって食べるものが変わることが一因と考えられている。
老化と相関する腸内フローラの変化が免疫に影響を与えたり、2型糖尿病や動脈硬化、がん、神経変性疾患など発症につながったりすることが指摘されている。もし、腸内フローラからの予測年齢を「腸年齢」と定義できれば、実年齢の違いを目印に病気の予測や予防に活用できる可能性がある。
しかし、実際には腸内フローラの個人差は非常に大きく、1000種類以上で40兆個を超える腸内フローラの何に注目すれば年齢を予測できるのか、手がかりはほとんどなかった(一言にバクテロイデーテス門と言っても数十種類いる)。