最新記事

米朝関係

なぜ今?トランプ政権が北朝鮮に対する人道支援制限を緩和

U.S. to Ease Limits on Humanitarian Aid to North Korea

2019年1月15日(火)18時00分
コラム・リンチ

その後、ドナルド・トランプ大統領は金正恩と2018年6月にシンガポールで首脳会議を行ったものの、それ以降、北朝鮮との非核化交渉は失速している。北朝鮮がミサイル開発を継続し、トランプ政権幹部からの交渉の申し入れをはぐらかしてばかりいるからだ。たとえば、北朝鮮高官はもう何カ月にもわたり、ビーガン(北朝鮮担当特別代表)と会談することを求める米国務省の要請を拒絶している。米国務省は2018年11月、ニューヨークで開催が予定されていたポンペオと北朝鮮高官との会談をキャンセルすると発表した。

しかしジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は12月、「北朝鮮側はこれまで約束を果たしていない」としながらも、交渉再開に向けてトランプと金の2度目の首脳会談が1月か2月に開催される可能性があると述べた。「大統領は2度目の会談は有益なものになるだろう」と、ボルトンは言う。

12月、ビーガンは、米政府が人道支援に対する制限を緩和すると発表した。同じ週の会合でビーガンは、北朝鮮への特別渡航許可を再申請するよう人道支援団体に促した。人道支援物資の輸送も間もなく可能になるだろう、と。

「ポンペオ国務長官は、北朝鮮の最も貧しい人々への人道支援を支持している。このことは、アメリカの人道支援団体が北朝鮮の草の根の人々との間に築いてきた信頼関係に対する米政府の肯定のサインになる」

もっとも、人道支援物資の輸送解禁の手続きは、米政府の一部閉鎖が終わるまで始められない。人道物資の特定は多くの人手がかかる上、米政府担当者の専門知識も必要になるからだ。米財務省が昨年行った金融取引に対する制裁強化も、人道支援を難しくしている原因の一つだ。

それにも関わらず、なぜこの時期に人道支援の緩和だったのか。遠くない将来にわかるかもしれない。

(翻訳:ガリレオ)

From Foreign Policy Magazine

20240528issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月28日号(5月21日発売)は「スマホ・アプリ健康術」特集。健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米カーライルの新たな日本投資特化ファンド、過去最大

ビジネス

正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=

ビジネス

AI規制の整備、新たなアプローチ必要も=英中銀

ワールド

台湾議会、改革巡り紛糾 野党案への抗議で数百人がデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中