最新記事

難民危機

【写真特集】熱感知カメラが捉えた難民と苦境

THE CASTLE

2018年12月12日(水)12時00分
Photographs by RICHARD MOSSE

難民収容施設となった旧軍事基地。収容能力を大幅に超えた人数が、有刺鉄線の中で移動もできず悲惨な生活を送る(ギリシャ・レスボス島)

<難民の存在と人権侵害の実態が外部の文明社会から「視認できない」現状>

写真集『The Castle』に収められているのは、各国の難民キャンプ。多くは周辺の現代的な社会から受け入れを拒まれているかのように隔離され、人目に付かないよう隠されているような場所もある。

撮影したリチャード・モスがテーマとしたのは、難民に対する政府や社会の冷淡な姿勢と、その結果として彼らが送る生活の悲惨さだ。だが彼は個々の人物に焦点を当てるのではなく、あえて遠距離から全体のイメージを捉える手法を採用した。しかも使用したのは、軍事監視用の赤外線サーマル(熱感知)カメラだ。

多くのテントや仮設の建造物が複雑に立ち並ぶモノクロの世界に、人体が発する熱が亡霊のように浮かび上がる。その姿は、難民の存在と人権侵害の実態が外部の文明社会から「視認できない」状況を暗示している。

悲惨な生活ぶりや貧しい身なりの子供の写真のほうが、同情は呼べる。だが同情することは、彼らの悲惨な状況を見過ごしてきた先進国の人々にとって一種の免罪符にもなる。自分自身にも責任の一端があると認めつつ、モスは写真を見る人もまた、彼らを見捨てた共犯者なのだと訴えている。


ppcamera02.jpg

2008年に閉鎖されたテンペルホーフ空港の跡地。公園に生まれ変わったこの地に、難民の臨時避難所が置かれている(ドイツ・ベルリン)


ppcamera03.jpg

シリアの隣国レバノンでは、人が密集し過ぎて不満が高まらないよう各キャンプを小規模に抑えている


ppcamera04.jpg

幹線道路脇の廃墟となっていたモーテルが、難民の一時収容施設として使われている(セルビア)


ppcamera05.jpg

シリアとの国境にあるトルコの小さな町の中心部には、シリア内戦から逃れてきた人々のキャンプが


ppcamera06.jpg

使用されていなかったオリンピック用のホッケースタジアムで暮らす難民たち(ギリシャ・アテネ)


ppcamera07.jpg

2015年から難民収容施設として使われている旧テンペルホーフ空港のターミナルビルの内部(ベルリン)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ウォルマート、数百人削減へ 本社などへの異動も要

ビジネス

MSCI銘柄入れ替え、日本株はアシックス1銘柄を新

ワールド

北朝鮮、盗んだ1.47億ドル相当の暗号資産を洗浄=

ビジネス

米家計債務、第1四半期は17.6兆ドルに増加 延滞
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中