最新記事

韓国事情

韓国は、「反日」ではなく「卑日」になったのか?

2018年11月13日(火)19時30分
佐々木和義

2014年にセウォル号沈没事故が起きたとき、韓国のマスコミ各社は日本の海難事故対策を取り上げ、中央日報の記者は日本を見習うべきだとコラムで訴えた(中央日報)。2016年の慶州地震や2017年の浦項地震でも日本の地震対応を取り上げるなど、事件や事故が起こるとマスコミ各社は日本との対比を記事にする。

一方で、日本を卑下する発言も少なくない。2016年の熊本地震や2018年9月の北海道胆振東部地震で震度6から7の地震被害が報道されると、韓国の最新マンションは震度7、2017年に竣工したロッテワールドタワーは震度9に耐えられると自慢する。日本の震度階級は0から7の10段階だが、韓国はメルカリ震度階級(MM)に基づく12段階の震度を採用している。韓国内の地震はマグニチュードが「地震規模」として報道されており、単純比較はできないのだが、地震の規模を表すマグニチュードと地震の揺れを表す震度を区別できない人たちは、数値だけを見て見下す発言を行っているのだ。

上下関係を過度に重視する

また、韓国人は上下関係を過度に重視する。優位な立場の人が相手を見下す'甲乙'が蔓延し、社会問題にもなっているが'甲乙'思想は国と国にも作用する。さまざまなランキングに一喜一憂し、自国よりランキングの低い国を見下すが、日本は別である。スポーツ大会で日本が第三国に勝利することを喜ぶ韓国人も、日韓戦では日本を卑下する言動を行って、韓国が勝利すると日本を見下し優越感に浸るのである。

朴槿恵前政権は世界各地で日本を貶める「告げ口外交」を展開し、マスコミ各社は独立運動家の追悼碑の前でひざまずく鳩山由紀夫元首相の姿を大きく取り上げた(聯合ニュース)。相次ぐ謝罪要求も日本を貶め、日本が謝罪する姿に溜飲を下げて優越感を感じたい'甲乙'の感覚が根底にあったと言えるかもしれない。

日本を貶める優越感は、公平が求められる法曹界にも伝播した。最高裁に相当する大法院は、2018年10月30日、新日鉄住金に対し、統治時代に日本製鉄に強制徴用されたと訴えた4人の原告に4億ウォン(約4000万円)の支払いを命じる判決を下している。国外の批判より国内世論を優先させた判決でもある。

慰安婦合意の破棄を主張していた文在寅大統領は、就任後はトーンダウンしたが、新日鉄の裁判では沈黙を続けている。

何か出来事があると、一方に振れがちな隣国への見方だが、日本に対する韓国世論も、常に複数存在することを忘れないようにしたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中