最新記事

輸送システム

イーロン・マスクのもう一つの企業「ボーリング」社、地下に画期的な交通システム構築へ

2018年6月12日(火)18時20分
鳥嶋真也

ボーリング社が計画している、「ループ」の想像図 (C) The Boring Company

宇宙企業のスペースX、電気自動車のテスラなどを率いるイーロン・マスク氏のもうひとつの企業、「ザ・ボーリング・カンパニー」(The Boring Company)は2018年5月17日、ロサンゼルスの渋滞を解消するため、地下に新たな交通システムを構築すると発表した。

実現すれば、ロサンゼルスのダウンタウンとロサンゼルス国際空港の間を、わずか10分で結べるようになるという。さらに同社の目論見は、それだけにとどまらない。

ザ・ボーリング・カンパニー

マスク氏がザ・ボーリング・カンパニーを立ち上げたのは2016年12月のことである。社名の意味はそのまま「穴掘り会社」という意味で、「退屈な会社」という意味もかかっている。また、わざわざTheやCompanyをつけたところには、似た名前の大手航空宇宙メーカー「ボーイング」の正式名称が「The Boeing Company」であることにひっかけたものだとされる。

同社の設立の少し前、ロサンゼルスにあるスペースX本社の従業員が、同社の駐車場と本社との間にある交通量の多い道路を横断していた際、トラックにはねられて死亡するという事故が起きた。その数時間後、マスク氏はTwitterで、トンネルを掘って地下通路を造ることを発表。その3か月後にはトンネルを掘っている様子を、さらに3か月後にはトンネル掘削機の画像を公開している。

彼はさらに、このトンネル技術を使い、地上や空と並ぶ、新たな交通網を地下に造ることを発表した。

地上はすでに交通量も利用できる土地も飽和状態、かといって空飛ぶ車は技術的に難しく安全性も低い。なによりどちらも悪天候に弱く、騒音もある。しかし地下ならそうした心配はなく、トンネルを掘りさえすれば、いくらでも空間が使える。地上の道路のように地域を分断させることなく、車線ごとにトンネルを分ければ対向車線との衝突といった事故も起こらない。

しかし、トンネルを掘るにはコストも時間もかかる。マスク氏によると、こうしたトンネル交通網を実現させるには、掘削にかかるコストを10分の1以下にする必要があるという。

そこで、トンネルの直径を小さくすることで作業量を減らしたり、トンネル・ボーリング・マシン(トンネル掘進機)の効率や速度を上げたりすることで、これを達成するとしている(参考)。

hyper002.jpg

ボーリングのトンネル・ボーリング・マシン (C) Elon Musk/The Boring Company

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中