最新記事

トランプ政権

トランプ信者が外交トップへ CIA長官から国務長官になるポンぺオの横顔

2018年3月19日(月)16時54分


米朝首脳会談

ポンペオ氏は元陸軍将校で、ハーバード大学ロースクールを卒業。CIA長官に抜擢される前は、カンザス州選出の下院議員だった。今後は、外交にほとんど関心を示さず、ツイッターでティラーソン氏をけなすことにも躊躇を見せなかった大統領に対処するという任務を負う。

最大の課題の1つは、多くの上級外交官の辞任に動揺し、予算削減提案で苦々しい思いを味わっている国務省内の信頼を得ることだろう。

同省の官僚は、大統領が耳を貸す新たなトップを迎えることを喜んでいるかもしれないが、多くのキャリア外交官を無視して、限られた側近に頼る手法が広く批判されたティラーソン氏の流儀を、ポンペオ氏が断ち切ることができるか、注意深く見守ることになるだろう。

だが、これまではCIA長官として、北朝鮮に対する軍事的オプションをより真剣に検討するよう進言していたポンペオ氏にとって、何よりも大きな課題は、史上初の米朝首脳会談をまとめるために、自身がどのような役割を演じるかという点だろう。

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ大統領の会談は、北朝鮮による核・ミサイル開発計画をめぐる深刻な対立を打開するきっかけとなる可能性がある。

トランプ氏は今月、米朝首脳会談の開催に同意し、ティラーソン氏や他の上級補佐官を驚かせた。会談の場所や詳細な時期、この会談に何を期待するかといった点は、まだ明らかにされていない。

「あと数カ月もすれば」北朝鮮は核弾頭を搭載したミサイルによる米国攻撃の能力を得る、とポンぺオ氏は最近警告していた。

「前例のない北朝鮮との首脳会談を控えた国務長官解任は、賢明ではないし、トランプ大統領が戦略的に動いていないことを示している」と、オバマ前政権下の国家安全保障会議で軍縮・核不拡散問題担当のシニアディレクターを務めたジョン・ウルフスタール氏は語る。

「国務省の運営という点では前任者より有能かもしれないが、米朝首脳会談を成功させるために必要な地域・グローバル政策の調整をマネジメントする素養はない」とウルフスタール氏は断じる。

昨年4月まで米国における東アジア・太平洋地域担当のトップ外交官で、現在はアジアソサエティ政策研究所に在籍するダニエル・ラッセル氏は、ティラーソン氏からポンペオ氏への国務長官交代は、北朝鮮との対話にプラス材料だと語る。

「北朝鮮側は、トランプ政権内の政治力学をはっきりと見極めている」とラッセル氏。「暴君的リーダーがあらゆる意志決定について最終的な決定権を握っており、部下は指導者の指図に従うのであって、その逆ではない」

だが、ジョージ・W・ブッシュ元大統領の政権下で北朝鮮に対応していた米国の上級外交官エバンス・レビア氏は、ポンペオ氏の「党派心」が懸念の種になるだろうと語った。「ポンペオ氏が、自分の党派心や大統領への個人的忠誠よりも、自身の任務、そして国家への献身を優先してくれるよう祈りたい」

(翻訳:エァクレーレン)

Matt Spetalnick and David Brunnstrom

[ワシントン 13日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中