応急処置で肺に針を 北朝鮮亡命兵士、救出から6時間の手術まで
イ・グクジョン医師ら亜州大学病院のスタッフが懸命に医療活動にあたった YTN news / YouTube
<銃撃を受けた北朝鮮の亡命兵士を救ったのは韓国人医師たちによる懸命な医療行為だった>
11月13日、板門店の軍事業界線を越えて韓国側に脱北してきた亡命兵士。彼が現在も治療を受けている病院に運び込まれたときの映像をCNNが公開し、当時の緊迫した状況が改めて浮き彫りになった。
CNNによると、亡命兵士は米軍のヘリコプターによって、京畿道水原市の亜州大学病院の緊急医療センターに運び込まれてきた。
イ・グクジョン亜州大学病院重症外傷センター長ら医療チームがストレッチャーに移し替えて手術室に運び込んだ当時、兵士は腹部と右側骨盤、両腕、脚など5か所以上に銃撃を受けてから25分が過ぎていた。
「半分よりはるかに多くの血液を流して、低血圧とショックで死にかけていた。まるで割れた瓶のような状態で、充分な血液を送り込むことが出来なかった」とイ医師は語る。
10数名の医療チームが彼を手術台に乗せ、最初30分は彼の呼吸を維持させようと懸命の作業を行ったという。ようやく落ち着いたのもつかの間、さらに深刻な事態が発生した。
兵士の体内から銃弾を取り除くための手術は5時間かけて行われたが、腸の傷をふさごうとしたところ、寄生虫が出てきたという。また、手術中、何度か兵士の容体が不安定になることがあった。イ医師はこの兵士が手術台で亡くなるのではないかと考えたという。「彼が助かったのは奇蹟だ」と語る。
手術後に意識を取り戻した兵士は、すぐに自分がいるところがまだ北朝鮮ではないかと心配していたという。イ医師は「兵士に、ここは本当に韓国だよね?と聞かれたので、私がこの太極旗(韓国の国旗)を見てごらん、と答えてあげた」とCNNに語った。
CNNは今回の亡命兵士への緊急手術のほか、多数の救急患者を救ったイ医師ら亜州大学病院重症外傷センターの日常の活動も紹介。こういった日々の医療活動の実績の積み重ねが、北朝鮮からの亡命兵士の命を救った鍵だったと紹介した。
イ医師に関しては、亡命兵士の手術後に行った記者会見で、兵士の腸から寄生虫や未消化のトウモロコシの芯が見つかったことなどを紹介した点について、「亡命兵士の人権を傷つけた」と非難する声が韓国国内で巻き起こった。今回CNNの取材に応じて手術当時の映像を公開したのは、こうした批判する国内世論への反論という意味もあるようだ。