最新記事

日本企業

品質偽装、把握から出荷停止まで8カ月 三菱マテリアルが不正発覚を謝罪

2017年11月24日(金)21時05分

11月24日、子会社で検査データの書き換えなどの不正が発覚した三菱マテリアルの竹内章社長は記者会見を行い、「お客様や株主をはじめ、多くの皆様に多大なご迷惑をおかけしたことを、深くお詫びする」と謝罪した。写真は都内で撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

子会社で検査データの書き換えなどの不正が発覚した三菱マテリアル<5711.T>の竹内章社長は24日、記者会見を開き、「多くの皆様に多大なご迷惑をおかけしたことを、深くお詫びする」と謝罪した。ただ、問題の背景については、調査委員会の結果を待ちたいとして、答えなかった。説明責任に後ろ向きな姿勢はあらためて問われそうだ。

不正が発覚したのは三菱電線工業と三菱伸銅、三菱アルミニウムの3社。3社とも一部製品で顧客が求めた品質基準に達していないにもかかわらず、基準を満たしているかのように検査データをごまかし、不適合品を出荷していた。

不適合品が出荷された可能性のある先は三菱電線が229社、三菱伸銅が29社。現在、対象企業に説明を始めているが、全ての安全性が確認できる時期は未定という。一方、三菱アルミは16社に不適合品を出荷していたが、すでに安全性の確認は取れたとしている。

三菱電線は今年2月に不正を把握したにもかかわらず、出荷を停止したのは10月23日だった。不適合品が混じっている可能性があることを知りながら、約8カ月も出荷を続けていたことになる。三菱電線の村田博昭社長はこの点について問われると「不具合があるかもしれないという状況を把握していたのかと言えば、結果的にはそうだ」と述べ、問題があると知りながら出荷を続けていたことを認めた。

公表までに時間がかかったことについては、不適合品の特定などに時間を要したと説明。「特定せずに公表すると、さらなる混乱とご迷惑をおかけすることになる」と釈明した。

世耕弘成経済産業相は同日の閣議後会見で「なぜこれだけ時間を要したのか、適切なタイミングで説明を受けたい」と不快感を示した。

三菱伸銅と三菱電線は11月中旬に社外弁護士を含めた調査委員会を設置、原因究明と再発防止策の策定を始めた。三菱マテリアルの小野直樹副社長は調査完了時期について、三菱伸銅は年内、三菱電線は「調査範囲が広く、12月末の完了は難しい」との見通しを示した。年末に三菱伸銅が調査報告を、三菱電線は調査の進捗状況を、それぞれ報告する。

三菱マテリアルの竹内社長は、組織ぐるみの可能性について「調査委員会で事実関係の詳細と原因究明にあたっているので、答えられる段階にない」と言及を避けたが、親会社の関与については「まったくなかった」と明確に否定した。自らの経営責任については「私の責務は今回の問題を早期に解決して、再発防止策を実行することだ」と述べるにとどめた。

神戸製鋼所<5406.T>に続いて発覚した品質データの偽装。日本のモノづくりに対する信頼は大きく揺らいでいる。

(志田義寧 浜田健太郎)

[東京 24日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

グーグルマップ、「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に変

ワールド

サウジ、外国人投資規制を緩和 2大聖地に不動産持つ

ビジネス

ESGファンドへの資金流入、2024年は半減=モー

ワールド

トランプ米大統領、国境警備予算の増額を議会に要請
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 2
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 3
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」で記録された「生々しい攻防」の様子をウクライナ特殊作戦軍が公開
  • 4
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 5
    オーストラリアの砂浜に「謎の球体」が大量に流れ着…
  • 6
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 7
    日本や韓国には「まだ」並ばない!...人口減少と超高…
  • 8
    「これは無理」「消防署に電話を」出入口にのさばる…
  • 9
    天井にいた巨大グモを放っておいた結果...女性が遭遇…
  • 10
    AI相場に突風、中国「ディープシーク」の実力は?...…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 7
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 8
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 9
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中