最新記事

北朝鮮

金正男の遺体は北朝鮮へ マレーシア大使館員も平壌から帰国

2017年3月30日(木)23時13分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

マレーシアの現地メディア中國報によれば、30日午後7時23分ごろ、クアラルンプール空港発のマレーシア航空MH360便に金正男の遺体が乗せられたという。また、同じ便の搭乗者名簿には、今回の事件の容疑者とみられている北朝鮮大使館2等書記官ヒョン・ガンソン(44)、北朝鮮国営航空の職員キム・イクヨル(37)の名前が確認された。しかし、リ・ジウという名前で知られるもう1人の容疑者については、搭乗者名簿に名前が載っていなかったという。

韓国メディア聯合ニュースが現地消息筋からの情報として報じるところでは、マレーシア当局は北朝鮮側と25日から政府施設で交渉を行い、26日には初めて駐マレーシア北朝鮮大使館へ警察当局者の立ち入りを許され、ヒョン・ガンソン、キム・イクヨルら今回の事件の容疑者たちへの聴き取りを2時間半かけて行っていた。この交渉でマレーシアと北朝鮮との間で大枠の合意がなされたとみられる。

北朝鮮も同時に声明を発表

マレーシアの発表とほぼ同時に、北朝鮮の国営朝鮮中央通信も両国の共同声明として「朝鮮民主主義人民共和国は、死者の家族から遺体と関連した全ての書類を提出したことにより、遺体を共和国の死者の家族の元へ戻すことで同意した」と発表した。

韓国メディアNEWSISによれば朝鮮中央通信はさらに、「双方は両国関係の重要性を再認識した。これに関連し、両国は無査証制度を再導入する問題を前向きに討議することとし、二国間関係をより高い段階へと発展させるために努力することで合意した」とも述べ、今回の金正男暗殺事件をめぐって対立が高まった両国関係の改善しようとする動きを強調した。

今後の展開は?

北朝鮮に足止めされていた大使館関係者の無事帰国を実現できたマレーシアだが、北朝鮮との共同声明にあるような両国関係の再構築は難しいと言わざるを得ない。自国の国際空港で猛毒のVXを使った殺人事件を起こされた主権侵害はもとより、緊張が高まると相手側の国民をなかば拉致するかのような暴挙にでる北朝鮮と正常な国交回復は望むべくもない。

一方で、マレーシアのナジブ首相は事件の捜査を継続すると断言したが、今回北朝鮮大使館から2人の容疑者が帰国したことで、暗殺を実行したインドネシア人シティ・アイシャとベトナム人ドアン・ティ・フォンだけが残ることになり、真相究明はほぼ不可能になったといえる。さまざまな問題を起こしたとはいえ、事件はほぼ北朝鮮の思い描いた結末通りの幕引きとなりそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CPI、4月は前月比+0.3%・前年比+3.4%

ワールド

米大統領選、バイデン氏とトランプ氏の支持拮抗 第3

ビジネス

大手3銀の今期純利益3.3兆円、最高益更新へ 資金

ワールド

ニューカレドニアの暴動で3人死亡、仏議会の選挙制度
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中