英女王「死去」の符牒は「ロンドン橋が落ちた」
報道機関も女王の「有事」には備えている Dominic Lipinski-REUTERS
<英紙ガーディアンの調査報道で、今年90歳のエリザベス女王については60年代から死去の際の行動計画が練られていたことがわかった>
イギリス史上、国王として最も長い在任期間を誇るエリザベス女王。その女王が死去した時は、機密通信である符牒が流される――「ロンドン橋が落ちた」。このメッセージで、10日間にわたる綿密な葬儀が幕を開けるのだ。
大多数のイギリス人にとって、エリザベス女王は生涯唯一の国王だが、政府関係者や報道機関は、女王の死去のしらせに不意を突かれることがないよう長年準備を進めてきた。
英紙ガーディアンが今週掲載した調査記事によると、コードネーム「ロンドンブリッジ」と呼ばれるこの行動計画は、1960年代にはすでに存在し、今世紀に入ってからも2~3回の更新が行われている。
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リハーサルを本気に
1952年に前国王ジョージ6世が死去した当時とは違い、女王死去の知らせは数時間ではなく数分間で知れ渡る。しかし厳密な手順も残されている。イギリス首相が報告を受けた後、女王が君主となっている15の国の政府に伝えられ、続いて残りのイギリス連邦の国々の元首に伝えられる。
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公共放送BBCも、かつてのように最初に知らされる特権は持たないが、それでもかなり大がかりな緊急報道態勢を組んでいる。女王死去のニュースが入れば、冷戦時代に構築された無線警報放送システム(RATS)のスイッチが入る。
しかしBBC内部でも、RATSが「くたばりそうな王族(royal about to snuff it)」というジョークになる程、ほとんどの職員はこのシステムがどういうものかわかっていないという。
民間放送のITVやスカイニュースでも、女王死去後の特別編成について定期的なリハーサルを実施している。その際には、警戒が広がらないよう、女王の代わりに「ロビンソン夫人」という名前を使っている。
2015年には、実際にリハーサルが外部に知られたことがあり、この時にはBBCの記者がリハーサルを聞いて、本当に女王が死去したと信じ込み、ツイッターでニュースを流してしまった。