来週プーチン露大統領来日、北方領土への期待値下げる安倍首相
12月8日、安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領の会談を来週に控え、日本では領土交渉への期待値が低下しつつある。経済協力は一定の成果を見込むが、領土問題は協議が具体化するにつれて難航しているもようだ。リマで11月撮影。提供写真(2016年 ロイター/Sputnik Photo Agency)
安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領の会談を来週に控え、日本では領土交渉への期待値が低下しつつある。経済協力は一定の成果を見込むが、領土問題は協議が具体化するにつれて難航しているもようだ。
ロシアとの関係改善を示唆するトランプ米次期大統領の登場も不確定要素で、今回の会談では大きな進展が望めそうにないとの見方が関係者の間で強まっている。
後手に回る安全保障の議論
12月5日の政府与党連絡会議。領土問題を含むロシアとの平和条約締結交渉について安倍首相が発した言葉は、2カ月前から明らかにトーンダウンしていた。
9月のプーチン大統領との会談では「手応えを感じた」(安倍首相)はずだったが、11月のペルーでの会談後の会見では「そう簡単な課題ではない」(同)、そして5日の会議では「1回の会談で解決できるような簡単な問題ではない」(同)と述べ、態度を後退させた。
ロシアとの平和条約締結という政治遺産を残しつつ、台頭する中国への対抗策としてロシアとの接近を図る安倍首相は、経済協力をテコに領土交渉を前進させようとしてきた。
プーチン大統領にとって、領土問題での妥協は政治的なダメージになりかねないが、日本と経済的な結びつきを強めることは、制裁とエネルギー価格の低迷に苦しむロシアにはメリットのある話だった。
日本の関係者によると、日ロ両政府の交渉は経済協力が先行した。首相官邸と世耕弘成経済産業相を中心に約30項目の優先プロジェクトを決め、案件の具体化に向けた調整を精力的に続けた。
一方で、ロシアから引き渡された後の島に対し、日米安保条約の適用をどうするのかなど、安全保障面の交渉は後手に回った。
10、11月ごろから安保面の議論がようやく具体化し始めたもようで、同関係者は「ロシア側の空気が冷たくなった」と指摘する。「たとえば国後島の境界ぎりぎりで何かが起きたときに米軍はそこへ行けるのか。おおざっぱに議論しているうちはみんな総論賛成だが、詳細を話し始めると乗り越えがたい問題が出てくる」と話す。