最新記事

日中関係

中国軍軍事力強化表明――鳩山氏が筆頭演説した世界平和フォーラムで

2016年7月18日(月)08時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

北京で中国支持の発言をした日本の鳩山元首相 China Daily/via REUTERS

 7月16日に北京で開催された世界平和フォーラムで中国海軍高官が軍事力強化方針を表明した。本フォーラムで筆頭演説をしたのは鳩山元首相。鳩山氏がいかなる構図の中で中国支持を表明したかが見えてくる。

孫建国・中央軍事委員会聯合参謀部副参謀の発言

 北京にある名門校・清華大学が主宰し、中国人民外交学会が共催する「世界平和フォーラム(論壇)」の第5回大会が7月16日と17日の日程で開催された。形は清華大学という形式を取っているが、実際は政府主催と同じである。

 その証拠に、世界平和フォーラムの主席は唐家セン(王偏に旋)・前外相で、開会の辞は劉延東・国務院副総理(副首相)が行っている。

 16日午後6時からの講演で、孫建国・中央軍事員会聯合参謀部副参謀(海軍上将)は、中国国際戦略学会会長として演説した。 

 概略は以下のとおりである。

●南シナ海に関する仲裁裁判所の判決は、中国の軍隊に幻想を捨てさせ、軍隊を強化させなければならないという思いを抱かせる逆の役割を果たした。

●中国軍は軍事力を強化し、改革を深め、戦闘能力を高め、万やむを得ない状況下で、国家主権と権益を守るために、最後の決定的な役割を発揮しなければならない。

●いくつかの特定の国は、ダブルスタンダードを用いて、国際法を掲げながら、国際法に違反した行動をしている。

●いわゆる「航行の自由」という偽の命題は、軍事力を帯びた威嚇であって、中国は絶対に屈しない。

 孫建国氏は、演説の最後には「平和的解決によって争議を解決する」という言葉は使っているものの、それはこれが「世界平和フォーラム」だからであって、実際上は南シナ海における中国の権益確保のためには、軍事力を使った強硬手段も辞さない構えを示したものと解釈することができる。

鳩山前首相は「世界平和フォーラム」の筆頭演説者だった

7月16日の世界平和フォーラムの午前中のプログラムは、以下のようになっている。

09:30~09:35 唐家セン主席・開幕挨拶
09:35~10:00 劉延東副首相祝辞
10:00~10:20 コーヒーブレイク
10:20~11:30 本大会
鳩山由紀夫 日本首相(2009-2010)
ド・ビルパン フランス首相(2005-2007)

 その後、会場を移して昼食会があり、午後はロシアの元安全会議秘書(1998年)など多くのかつての要人が中国の正当性を讃えたあと、18時から、いよいよ孫建国が中国の軍事力強化が不可欠だという演説に入ったわけだ。
 
 つまり、わが国の鳩山元首相は、中国の正当性と軍事力強化という枠組みの中で「アジアの平和の海」と「世界の平和」を語ったことになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米高官、中国と北朝鮮巡り協議 強制送還への懸念表明

ワールド

トランプ氏、石油業界幹部に環境規制破棄を明言 10

ビジネス

英中銀、近いうちに利下げとの自信高まる=ピル氏

ワールド

ロシア軍の侵攻阻止可能、同盟国の武器供給拡大で=ウ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 4

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 5

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    自民党の裏金問題に踏み込めないのも納得...日本が「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中