ワンピース、キャプ翼、テトリス、辞書まで映画化!? 中国第3のバブルの実態
<ストーリーのないゲームが実写映画化されるなど、映画やゲームの原作となる「IP」の獲得競争が中国で激化。日本のアニメ・マンガを救う福音となるかもしれないが、日本企業は罠にはまらないよう注意も必要だ> (写真は「テトリス実写化ってこんな感じになるの?」とネットユーザーが制作した写真、中国メディア「今日頭条」より)
ここ数年、「IPバブル」という言葉が中国メディアをにぎわせている。エンターテインメント市場が急成長するなか、映画やゲームの原作となる「IP」に膨大な投資マネーが流れ込んでいるのだ。
「IP」とはいったい何か。そして、中国の「IPバブル」は日本に何をもたらし、あるいは、どのようなリスクが待ち構えているのだろうか。
限界を超えて広がる中国のIPバブル
世界を席巻した名作パズルゲーム「テトリス」が実写映画化される。「ストーリーのないパズルゲームをどうやって映画に!?」と世界のネットユーザーがツッコミを入れているが、着々と段取りは進んでいる。予算はなんと8000万ドル。宇宙をまたにかけたSF巨編になるのだとか。ちなみに俳優は中国人、ロケ地も中国になる予定だ。
実は、このテトリス映画化も中国を席巻する「IPバブル」の一環だ。IPとは「Intellectual property」(知的財産権)の略語だが、現在の中国では「映画やドラマ、ゲームの原作となるような知名度のある"なにか"」というぐらいの意味でよく使われている。ネット小説を実写ドラマ化した「IP劇」という言葉が火付け役だ。原作付き映画・ドラマのヒットをきっかけとして、映像化権やゲーム化権の獲得競争が勃発。戦場はネット小説以外にも広がり、テトリスまでその波に巻き込まれたというわけだ。
テトリスの映画化だけでも十分に不思議な話だが、これ以上の奇妙なエピソードも伝えられている。先日、中国ナンバーワンの漢字字典『新華字典』の映画化権を取得した企業が現れたというニュースが伝えられた。学校で無料配布されているだけに誰もが知っている大IPだという考えなのだが、果たして漢字字典がどのような映画になるのだろうか?
【参考記事】4.3億回、中国人に再生された日本人クリエイター
ともあれ、中国ではエンタメ企業やIT企業がIP獲得競争を繰り広げる「IPバブル」が起きており、その影響はすでに日本にも到達している。手塚治虫の名作『ブラック・ジャック』の実写ドラマ化、高橋陽一のサッカー漫画『キャプテン翼』のアニメ映画化など、中国企業による日本IP獲得が続々と発表されている。水面下で交渉が進んでいる作品はさらに多いようだ。
「海賊版大国」の中国では、コンテンツで稼ぐことは難しかった。それがIPバブルによって大きく変わろうとしている。IP獲得競争により契約金が高騰しているだけに、コンテンツの供給者にとって中国は十分旨味があるマーケットになりつつあるというわけだ。
【参考記事】海賊版天国だった中国が『孤独のグルメ』をリメイクするまで
もっとも"交渉"の中には怪しげな話も少なくない。日本のIPを獲得できるコネを持っている、中国の大手メーカーにわたりをつけられると吹聴するも、実際にはなんのパイプも持っていないブローカーが出没しているとの話も聞いた。