最新記事

中東

【写真特集】輝きを失ったシナイ半島の桃源郷へ

ISISが近づくシナイ半島南部には、ロシア・東欧の人々が訪れる寂れたリゾート地が広がる

2015年11月6日(金)19時00分
Photographs by Andrea & Magda Photographers

シャルムエルシェイクに昨年建てられたショッピングモールには、スケートリンクやボウリング場もある。だが数百店舗の多くはまだ空き屋だ

 美しい紅海と砂漠、遊牧民ベドウィンの文化──昔から世界の多くの人々を引き付けてきたエジプト東部のシナイ半島。なかでも南端のシャルムエルシェイクは人気のリゾートだ。

 しかし「アラブの春」による政情不安で、同国を訪れる観光客は大幅に減少。紅海沿岸地方の人々にとって、11年のエジプト革命の舞台となった首都カイロのタハリール広場は、「大惨事」と同義だ。最近ではテロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)傘下の過激派の北シナイ占拠も話題になった。

(編集部注:今年10月31日、シャルムエルシェイクを離陸後にエジプト・シナイ半島で墜落したロシア・コガリムアビア航空の旅客機に関して、ISIS系の組織が「撃墜した」という犯行声明を出している。)

map_egypt.jpg

 そんななかでも、シャルムエルシェイクはロシアや東欧、中東の観光客を呼び込み、息を吹き返しつつある。だが他の地域では建設途中のままうち捨てられたり、人けのないホテルや巨大施設が目立つ。

 観光開発はシナイをすっかり変え、地元文化と懸け離れた人工的な建物だらけの場所にしてしまった。フランスの人類学者マルク・オジェが言う、標準化されて個性を失った「ノン・プラセ(非場所)」だ。そんなシナイの今を、写真家のアンドレアとマグダはカメラに収めた。

 空っぽになったその舞台では旅行者やベドウィン、労働者それぞれが与えられた役柄を演じているようにも思える。


pssinai-02.jpg

シャルムエルシェイクの砂漠を四輪バイクで走る観光客向けツアー。ラクダ乗りや、ベリーダンスショー付きディナーなどが含まれるものが多い


pssinai-03.jpg

ラス・モハメッド国立公園のビーチでガイドの話を聞くロシア人観光客。美しい自然が保護されているラス・モハメッドは人気の旅行先で、団体ツアーも多い

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中