最新記事

中国

抗日戦勝記念式典は、いつから強化されたのか?

大々的な式典を始めたのは江沢民だが、それには理由があった

2015年8月28日(金)16時30分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

騒動の原点 毛沢東時代に行われなかった式典を始めたのは江沢民(江の肖像写真のそばに立つ衛兵) Jason Lee - REUTERS

 毛沢東時代には行われていなかった抗日戦勝記念式典は、いつから行われるようになったのか? 習近平政権を読み解くには、そのきっかけと推移を考察し、逆行する対日強硬論の根源を探らなければならない。

大々的な式典は江沢民時代の1995年から始まった

 8月26日付けの本コラムで、「毛沢東は抗日戦勝記念を祝ったことがない」と書いたが、それならいったいいつから、そしてなぜ抗日戦勝記念式典を行うようになったのだろうか?

 まず結論から言えば、大々的な式典という形で開催し始めたのは江沢民時代の1995年からである。

 式典という形でなく、北京やその他の地方における地域性の座談会的なものは、改革開放後の80年代初頭から徐々に始まっている。しかしそれも、江沢民が国家主席になるまでは、全国的な行事ではなく、また式典という形で行われたことはない。

 1995年5月9日、第二次世界大戦終結50周年という大きな節目にあたり、冷戦構造崩壊後の旧ソ連すなわちロシアにて、「世界反ファシズム戦争勝利50周年記念」が開催された。当時の中国の国家主席・江沢民は、当時のロシアのエリツィン大統領の招聘を受けて、会議に出席した。

 連合国側の国家として戦ったのは「中華民国」なのだから、「中華人民共和国」が連合国側の国家として招聘されるというのは、奇妙な話だ。しかし「中華人民共和国」が「中国」を代表する国家として国連に加盟していたので(1971年)、中華民国の業績も中華人民共和国の業績として受け継ぐことになったと解釈することが許されたと、中国は思ったにちがいない。

 江沢民にとっては、どれだけ誇らしく、かつ自信をくすぐる大きな出来事だったか、想像に難くない。

 1950年代半ばから、ソ連とは中ソ対立があり敵国同士だったが、そのソ連が1991年末に崩壊しロシアとなったため、ようやく中国と和解したしるしでもあった。

 その夜、モスクワのクレムリン宮殿では、式典を祝賀するための晩餐会が開かれ、各国首脳が顔をそろえていた。午前中に開かれた記念式典でスピーチをした首脳は、この晩餐会ではもうスピーチをしないことになっていたのだが、司会者がなぜか、アメリカのクリントン大統領やフランスのミッテラン大統領をはじめ、主たる国家の首脳を再び壇上に上がらせ、乾杯の音頭のための挨拶をさせ始めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ホンダ、電動化とソフトへ投資倍増 30年度までに1

ワールド

中国、生産能力過剰論に反論 米欧の「露骨な貿易保護

ワールド

ウクライナが米欧を戦争に巻き込む恐れ、プーチン氏側

ビジネス

商業用不動産、ユーロ圏金融システムの弱点=ECB金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中