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ブラジルW杯を脅かす若者たちの怒り
車を壊しタイヤに火を付ける過激派グループ、ブラック・ブロックは何者か
発祥はドイツ サンパウロの反W杯デモに集まった若者たち Paulo Whitaker-Reuters
マスクやバイクのヘルメットで顔を隠した集団が車を破壊し、警官にレンガを投げ付け、タイヤに火を付ける──。6月12日にワールドカップ(W杯)の開幕を控えたブラジルのサンパウロやリオデジャネイロでは、そんな光景が繰り返されている。
警察当局によれば、彼らは「ブラック・ブロック」という過激派グループだ。しかし、取材に応じたサンパウロのAMと称する32歳の人物は、ブラック・ブロックは組織の名称ではなく怒れる若者たちのデモ戦術だと語る。「ブラジルのスラムでは前からあった暴力行為が都市の真ん中に出てきたんだ」
ブラック・ブロックのデモ参加者の多くは左派でも右派でもなく、現在の「システム」全体に反対していると、AMは言う。
ブラジル政府はW杯に117億ドルもの大金をつぎ込む一方で、荒れ果てた学校や病院は放置していると、AMは怒る。だが同時に、反W杯デモは世界的な運動の一部だとも考えている。「代議制民主主義はもはや誰も代表していない。街頭で圧力をかけなければ、政治的な力にならない」
この戦術が誕生したのは1980年代のドイツ。警察と対峙した反原発派や不法占拠者が暴徒化したのがきっかけだ。その後、00年前後の反グローバル化運動にも取り入れられ、ブラジルでは13年、公共交通機関の値上げに反対するデモで注目されるようになった。
運動の主力は10代から20代前半の若者たちで、中流や中流下層の出身者が多い。「新しい世代はすごく過激だ」と、AMは言う。「まともな仕事も子供も責任もないから、警察と正面からやり合うことを恐れない」
W杯期間中の暴動は、再選を狙うルセフ大統領にとって大きな痛手になる。もっとも、デモ参加者の多くは野党を含む全政党に非難の矛先を向けている。
「若者たちはすべての政治家に失望している」と、社会学者のエステル・ソラノは指摘する。「既存のシステムにはうんざりしているが、新しいシステムはまだできていない」
From GlobalPost.com特約
[2014年6月 3日号掲載]