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鉱物資源中国を凌駕する北朝鮮のレアアース
レアアース「独占」で幅を利かせている中国の6倍ものレアアース資源が北朝鮮に眠っている?
採掘場(中国)。北朝鮮が中国に取って代わる日は来るか Reuters
世界最大のレアアース鉱床が北朝鮮に──。昨年12月、北朝鮮で地質調査を行った英企業はそんな発表をした。
英領バージン諸島を拠点とするSREミネラルズ社によれば、平壌の西北に位置する鉱床に推定2億1600万トンのレアアースが眠っている可能性がある。
全世界で確認されているレアアース埋蔵量(推定1億1000万トン)の約2倍だ。
レアアースは携帯電話から誘導ミサイルまで多くの最先端テクノロジーに使われている。極めて希少というわけではないが、採掘規制が欧米ほど厳しくない中国が現在、シェアの90%以上を占めている。中国はこの独占に近い状態を利用して、政治的に対立する国を牽制してきた。
北朝鮮に大量のレアアースをはじめとする鉱物資源が眠っている可能性があることは以前から知られていたが、SREミネラルズ社の試算は従来の予想を大きく上回る。同社の読みどおりなら北朝鮮のレアアース資源は中国の約6倍で、理論上は中国の独占に終止符を打てる。多くの先進国と違って、北朝鮮では環境規制や労働条件が採掘の足かせになる心配もない。
とはいうものの、重大な障害が残る。レアアースの採掘と外国市場への出荷だ。採掘・出荷プロセスに関する技術的問題に加えて、北朝鮮の政治環境が同国でのビジネスを非常に難しくしており、そのせいで北朝鮮政府は豊かな鉱物資源を十分活用できていない。
SREミネラルズ社は既に北朝鮮との合弁会社を設立。英領バージン諸島を拠点にするのは北朝鮮に対する経済制裁を回避するのが狙いだろう。
合弁会社は25年契約で定州鉱床を開発する予定で、精製工場も設立すると報じられている。しかし北朝鮮は外国企業との長期契約を突然打ち切ってきた「前科」がある。単なる気まぐれの場合もあれば、北朝鮮と企業の本国との政治的関係の変化が原因になったこともある。
90年代の韓国の太陽政策(対北朝鮮融和政策)がいい例だ。当時、韓国の鉱業各社は北朝鮮に巨額の投資をしたが、その後南北関係が悪化して損失を被った。外国企業が北朝鮮に投資をした後で締め出されるケースもある。中国の鉱業大手、西洋集団は鉱山開発と人材育成のため北朝鮮に4000万ドルを投資したが、北朝鮮側が必要な技術を習得すると追い出されたという。
From thediplomat.com
[2014年2月25日号掲載]