最新記事

キューバ

カストロ仰天発言の真意

筋金入りの共産主義者も市場経済派に転向か

2010年9月16日(木)15時10分
アリアン・カンポフロレス(マイアミ支局長)、アンドルー・バスト

 フィデル・カストロ前キューバ国家評議会議長(84)ほど共産主義を象徴する人物はいない。59年のキューバ革命を率いたカストロは50年以上にわたって米政府と対立してきた。そんな筋金入りの共産主義者が先週、歴史をひっくり返した。「キューバ型経済モデルはもう機能しない」との彼の発言を、インタビューした米アトランティック誌の記者が伝えたのだ。

 キューバ経済がどん底にあることを考えれば、キューバ型経済モデルが苦境にあることをカストロが認めたのには、何か思惑があるのかもしれない。

 専門家によれば、キューバの観光収入は今年35%低下。在外キューバ人からの送金額も、00年代前半のピーク時の8億ドルを大きく下回る2億5000万ドルに減る見込みだ。国家統計局の調べでは、建設業や農業の経済指標も今年上半期に大幅に悪化している。

 実弟のラウル・カストロ議長は8月に政府職員の約20%を解雇または異動させる計画に着手した。労働人口の90%以上を政府が雇っている現状を考えれば大転換だ。

弟ラウルへの援護射撃

 フィデルが衝撃的な発言をしたのは、政権内の強硬派から抵抗を受ける恐れのある経済改革を断行する弟ラウルへの援護射撃なのかもしれない。7月にラウルが52人の政治犯を釈放するのに同意した直後、フィデルはその措置を黙認したと示すかのようにたびたび公の場に姿を現した。

 ラウルは少しずつ慎重に政策転換を図っている。理髪店などの小さな商売を始めることが可能になった。農家は私有地を耕して道具や肥料を政府から買えるようになり、外国人が国有地を借り受けることも認可されるようになった。

 フィデルはキューバ型経済モデルの時代が過ぎ去ったことを認識しているらしい。特筆すべき点は、彼が次なる時代について前向きに考えていることだ。


[2010年9月22日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米公共放送への政府資金打ち切り、トランプ氏が期待 

ワールド

豪CPI、2月は前年比+2.4%に鈍化 予想下回る

ワールド

ロシア産原油の制裁解除、道のり長い=スイス石油4商

ビジネス

海外動向など「不確実性高い」、物価に上下のリスク=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 8
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中