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「俳句の才能査定ランキング!」MC浜田雅功さんのコールから始まるこの番組。MBS『プレバト‼』俳句コーナーは、この11月[編集部注:2024年]で丸11年を迎えた。
ゴールデンタイムのバラエティで俳句を扱うという製作スタッフの英断のおかげで、俳句の裾野はずいぶん広がってきた。感謝してもしきれない11年間だった。
視聴者の皆さんから「梅沢富美男さんを相手に、丁々発止の台詞を!」などと、筋違いなお褒めの言葉を頂くことがあるが、とんでもない誤解だ。
あの番組には、その手の台本は一切ない。リハーサルは1秒もない。出演者は互いにどう展開していくか微塵も知らないまま、収録は進んでいく。俳句コーナーのオンエアは、通常回なら30分ちょっとだが、カメラを回すのは40分程度。その間カメラを止めることは一切ない。
つまり、俳句コーナーは生放送に近いかたちで収録され、ほぼそのまま放映されているのだ。
番組制作上のこの仕掛けは、出演者のナマの表情や感情を映し出す。その生々しい臨場感が、番組の魅力となっているのだろう。
出演者の皆さんは、おのおの少しずつ俳句にハマってくれるようになった。添削を通して俳句の仕組みを理解し、日本語における助詞の面白さに興味を持ち始める。面白い! と思ったら、誰でも勝手に学び始める。それが、学びのメカニズムだ。
俳句に触れるようになると、「ぶらんこが春の季語?」「絵日記定番の朝顔や西瓜が、秋の季語だなんて!」と季語の面白さに興味を持ち始める。
時には、やたら生真面目な人からこんな質問を受けることもある。「俳句をやろうと思うのですが、まずは歳時記の季語を全部覚えることから始めればよいのでしょうか?」私は、慌てて止める。「いやいや、そんなことやってる場合じゃないですよ」と。
歳時記に載っている季語の数は、編者の考え方や頁数という物理的制約によって多寡はあるが、多いものだと1万7000語ほど。全部覚えてから俳句を始めるという決意は立派だが、寿命の方が先に尽きてしまうに違いない。
とはいえ、歳時記を手元に1冊置いておくことは、人生を豊かにする。
「春・夏・秋・冬・新年」と5つの季節に分かれる季語は、更に「時候・天文・地理・人事生活・植物・動物」と6つのジャンルに分類される。季語は、私たち日本人の文化と自然を網羅するインデックスなのだ。