最新記事

視点

パキスタンはテロリストの「デパート」

2010年5月10日(月)17時33分
ファリード・ザカリア(国際版編集長)

彼らの「買い物」に理想的な国

 テロ未遂を起こしたシャザドは、パキスタン滞在中に部族地域の北ワジリスタンで訓練を受けたといわれる。北ワジリスタンはアフガニスタン人やインド人、西洋人を攻撃するテロ組織が根城にしている地域だ。パキスタン軍は昨年、国内でテロ攻撃を始めた組織の隠れ場所である南ワジリスタンで掃討作戦を行った。しかしアメリカやNATO(北大西洋条約機構)の再三の要請にもかかわらず、北ワジリスタンでの掃討作戦は拒否している。

 軍から見れば、今は攻撃に適当な時期ではない、と言わざるを得ない理由が常に存在する。アフガニスタン事情に詳しいパキスタン人ジャーナリストのアハメド・ラシッドは最近、パキスタンはアフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンに対して影響力を持ち続けていると報じた。ただしその影響力をもって、タリバンとアフガニスタン政府の和平を仲介するのではなく、アフガニスタン政府に自分たちの言うことを聞かせようとしているという。

 パキスタンが国益について総合的な見方(自国の安全保障にとって重要なのはアフガニスタンやインド相手の戦略的駆け引きではなく、経済発展だと考えること)をしない限り、テロリストたちはパキスタンを「買い物」に行くのに理想的な場所だと考え続けるだろう。

 過去40年にわたり、イスラム主義によるテロのほとんどは2つの国とつながりがあった。サウジアラビアとパキスタンだ。両国ともイデオロギー的なイスラム国家として建国された。何年もの間、政府が正当性を手にするため宗教的イデオロギーを強化したため、両国とも原理主義やジハードの温床になった。

 おそらくサウジアラビアでは、分別ある絶対君主アブドラ国王の統治により、その流れは徐々に変わりつつある。それに比べて、パキスタンがジハードの過去を克服するのは容易ではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、4月は19.2万人増 予想上回る

ビジネス

EXCLUSIVE-米シティ、融資で多額損失発生も

ビジネス

イエレン米財務長官、FRB独立の重要性など主張へ 

ビジネス

米3月求人件数848.8万件、約3年ぶり低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中