最新記事

台湾

内閣総辞職でも馬英九は無傷

2009年9月18日(金)13時57分
長岡義博(本誌記者)

 台風が台湾政界を揺さぶった。8月に台湾南部を襲った台風は、700人を超える死者・行方不明者を出した。被害への対応が遅いと批判されていた台湾・国民党の劉兆玄内閣は9月10日、ついに総辞職に追い込まれた。

 馬英九総統の支持率も台風直後には過去最低レベルの29%に急落。被災者感情に配慮し、中国の反対を押し切ってチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の訪問まで受け入れざるを得なかった。馬の政治生命と中台の蜜月関係は、もはや風前のともしびなのか。

 そうでもない。内閣総辞職に伴い、馬は有力な若手政治家である朱立倫(48)を副首相として入閣させた。国民党副主席の朱は台湾大学を卒業後、ニューヨーク大学で金融学と会計学を学んだ経済通。台北の隣の桃園県長として税収を倍増させるなどの実績もある。新内閣の顔触れが発表されると、台湾の株価は年初来高値を更新した。

 昨年来の金融危機で激減した中台貿易も回復傾向にあり、ダライ・ラマ訪問中の8月末には中台間の定期直行便も就航した。9月8日実施の世論調査では、馬の支持率は40%まで回復している。

 「台風は中台関係にとっても馬個人にとってもプラスだった」と、淡江大学国際情勢・戦略研究所の林中斌教授は言う。「大陸はダライ・ラマ受け入れに過剰反応しなかったことで寛容さを示すことができたし、馬は自分の後継者候補の朱を入閣させることもできた」

 台風一過、とはこのことだ。

[2009年9月23日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは横ばい圏155円後半、実需の買い一

ビジネス

日経平均は反発、節目回復で上昇に弾み 先物主導で見

ビジネス

東京海上、政策株式を29年度末までにゼロに 今年度

ワールド

インドネシア経常赤字、第1四半期は対GDP比0.6
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中