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ドキュメンタリー

世界を変えた伝説のサマーキャンプ

The Joy of Finding Community

2020年05月22日(金)19時45分
ニューズウィーク日本版編集部

キャンプに参加した若者たちはやがて公民権運動の一翼を担う ELAINE POMRANTZ

<障害を持つ若者に勇気と誇りを与えた70年代のキャンプ『ハンディキャップ・キャンプ』にコロナ禍の今こそ学ぶべき知恵>

ストリーミング配信サービス、ネットフリックスの新作ドキュメンタリー『ハンディキャップ・キャンプ障がい者運動の夜明け』の中で、監督のジム・レブレクトは15歳だった1971年に初めてキャンプ・ジェネドで過ごした夏を振り返る。「このキャンプが世界を変えた。なのに、誰もそれを知らないんだ」

タイトルの由来にもなっている伝説のサマーキャンプは、障害を持つ若者たちに自分のアイデンティティーと熱中できるものを探すよう励まし、コミュニティーの大切な一員だと感じさせるものだった。レブレクトの映画では自由恋愛時代のキャンプで育まれたコミュニティーとイデオロギーがいかにアメリカの障害者の権利運動の基礎を築いていったのかが描かれている。

バラク・オバマ前大統領夫妻も製作総指揮に名を連ねる本作は2020年1月にサンダンス映画祭でオープニング上映され、ドキュメンタリー部門観客賞を獲得。3月25日にネットフリックスでプレミア上映された。レブレクトと共同監督のニコル・ニューナムにスレート誌のコーネリア・チャニングが話を聞いた。

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COURTESY NETFLIX

――新型コロナウイルスの感染爆発のさなかの公開だが。

ニューナム ヨーロッパの映画祭への参加や映画館での上映ができなくなったのは残念だが、絶好のタイミングとも言われた。新型コロナ危機は弱者に打撃を与えているが、社会の仕組みが弱者を生んでいることがこの映画を見れば分かるはずだ。

世界を誰にとってもよりよい場所に変えられることを、世界中の人々に分からせたい。熱意があれば小さな集団でも大きな変化を起こせるというのがこの映画のメッセージだ。今回の危機が終息したら望みどおりの社会をどうやって再建するか、自問しなくては。

――(原題の)Crip Campについて少し話を聞きたい。

レブレクト (障害者を指す差別用語の)cripを使うことについては障害者の間でも賛否両論あったが、70年代の活動家を筆頭に、差別用語が誇れるものに変わったと感じている人が多い。障害者にとっても他の人々にとっても、障害者という特定の政治的・文化的アイデンティティーを示すようになった。私にとってcripとは「自分が障害者の1人であることを、そして障害者のより大きな役割を誇りに思う」という意味だ。

ニューナム 障害者のコミュニティーとこの時代の文化を目に見える形にしたかった。メディアの中の障害者は逆境の中で孤立しているように描かれがちだ。彼らのコミュニティーはあまり描かれない。

障害を持つ人々が、特定の集団の目線から製作した映画だと知らせることが重要だと感じた。内部の人間らしいタイトルは、内部の人間が語る物語だということを明確にするのに役立った。cripという言葉の背景には政治的歴史がある。私たちはそれを受け入れて進展させたかった。

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