最新記事

米政治

CIAがひた隠す秘密暗殺部隊

イスラエルのモサドばりの暗殺計画が明らかになって米議会が激怒。だが、怒りの理由は部隊の違法性とは別のところにある

2009年7月15日(水)19時28分
マーク・ホーゼンボール、マイケル・イジコフ(ワシントン支局)

目には目を ミュンヘン五輪でパレスチナゲリラに殺害された選手団の記念碑を訪れるイスラエルのカツァブ首相(05年)。事件後、イスラエルは報復の暗殺部隊をヨーロッパに送った Alexandra Winkler-Reuters

 現在、CIA(米中央情報局)と民主党議員による激しい論争が巻き起こっている。その争点は、01年の9・11テロ後にCIAがコマンド部隊によるテロリストの逮捕・殺害計画を極秘作成していたという事実。米政府の元高官によると、この計画は72年のミュンヘン五輪で起きたイスラエル人選手の暗殺事件後にイスラエルが実行した報復作戦に類似しているという。

 CIA内でスパイ活動を行う部門(後に作戦本部と名付けられた)の職員は、過去数年にわたってこのような作戦計画を繰り返し作成・修正してきた。部隊を国外、時には友好国にも派遣してアルカイダ幹部を追跡や暗殺するという内容で、同胞選手を殺した容疑者を殺害するためイスラエル情報機関のモサドが「刺客」をヨーロッパに送り込んだのと同じだ、と元高官は言う。

 しかし複数の元職員や現職員によれば、この極秘計画が「完全遂行」されることはなかった。そしてレオン・パネッタCIA長官によって計画は6月に廃止された。

計画が実行できなかった理由

 元職員2人の証言によれば、9・11テロの直後にジョージ・W・ブッシュ政権はCIA作戦本部と協議し、テロリストを追跡したり、おびき寄せたりできる権限を諜報機関に与えるかどうかを話し合った。しかしCIA幹部は最終的に計画は失敗や露見の危険性が高すぎるとの結論に至ったと、別の元職員は言う。

 その結果、作戦本部(現在は国家機密部に改称)が提案した当初の計画は、ジョージ・テネット長官が04年に辞任するまでに中止に追いやられた。ポーター・ゴスとマイケル・ヘイデンという2人の後任長官も計画の凍結を解かなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは小幅安156円前半、持ち高調整 米

ビジネス

三井住友FG、1対3の株式分割 1000億円上限に

ビジネス

三井住友FG、今期純利益見通し1兆円超に 市場予想

ビジネス

日本郵政、発行済み株式の10.0%・3500億円を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中