最新記事

デイジタルネイディブ

10~20代はネットで調べるとき「ググらない」 その理由とは?

2020年3月25日(水)17時30分
望月 智之(いつも.副社長) *東洋経済オンラインからの転載

いまや食品メーカーも「時間」を重視している

消費者のニーズが、「時間」へと移り変わっているのは、ネットショッピングだけの話ではない。これから世の中のありとあらゆる商品は、「消費者の時間をつくること」が最優先となるだろう。

「安全」や「おいしさ」が最も大事であるはずの食品メーカーも例外ではない。今の時代、たいていどこのメーカーの商品もおいしいし、厳しい安全基準の中で製造しているため、これらの点はもはや差別化にはならないのだ。

そこで近年、食品メーカーが新たにテーマとしているのが、消費者の時間をつくるという「時間ソリューション」である。

例えば今、スーパーや鮮魚店で生の魚を一尾丸ごと買う人は減っている。現代人は仕事や育児で忙しく、魚をさばく時間、調理する時間がないからだ。野菜など他の食材もそうだが、「1個丸ごと」の代わりに売れているのは、カット済みの商品だ。家でグリルやフライパンで簡単に調理するだけで、食卓に並べることができる。

コンビニエンスストアの店内で、このところ冷凍食品が増えていることに気づいている人もいるだろう。実は近年、おいしさや鮮度を保つ急速冷凍技術が向上していることもあり、おいしい冷凍食品が昔よりも増えている。そこに、料理の時間を減らしたい消費者のニーズが高まったことも相まって、コンビニ各社は冷凍食品のラインナップを充実させているのだ。

Oisix(オイシックス)や生活協同組合(生協)も冷凍食品に力を入れているが、それだけではない。カットされた肉や野菜などの食材をセットにした「ミールキット」の販売にも積極的だ。こうした商品を買えば、食材選びやカットをする時間が省略されるし、余った食材をどう使うかといったこともあまり考えなくていい。

こうした「簡便商品」「時短商品」などと呼ばれる商品が、「レンジで温めるよりも実際に火を通したものを食べたい」「でも料理の時間を短くしたい」「もっと家族との時間を増やしたい」といった人たちの好評を得ているのだ。

「時間ソリューション」の競争が始まる

今後は、冷凍食品に加えて、こうした簡便商品の需要がさらに伸びることが予想される。すでにアメリカでは、いかに食事の準備や片づけにかかる時間を減らせるか、そして家族に楽しい時間を提供できるかという「時間ソリューション」の競争が始まっている。

世界的な大手食品メーカーは今、デジタル投資を加速させているが、その主な分野はAIの開発である。例えば、消費者のウェブサイトでの行動履歴や食事のパターン傾向などを読み取り、好みの献立・メニューを自動で推薦できることを目指している。

これによって、主婦が頭を悩ませる「献立を考える時間」を削減することができる。共働き世帯、1人暮らし世帯が増えている日本でも、食品メーカー各社が同様の競争を始めることは間違いない。

この「時間ソリューション」は、食だけではなく、衣食住のすべてに波及するだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米副大統領、フロリダ州の中絶禁止法巡りトランプ氏を

ワールド

シンガポールDBS、第1四半期は15%増益

ワールド

台湾のWHO総会出席、外相は困難と指摘 米国は招待

ビジネス

アングル:ドル売り浴びせ、早朝の奇襲に介入観測再び
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中