最新記事
不動産投資

「少額で始められ安定した収入と節税効果が」は、どこまで本当? 流行中の「不動産小口化商品」の実態

2024年1月19日(金)18時08分
咲本慶喜(株式会社GO STRAIGHT代表取締役)

ほかにも、いずれの方式にも共通する不動産小口化商品の大きなリスクとして、事業の特性上、一定期間は解約不可で出資金が返還されないという制限を設けられているケースが多く、この場合、資金が必要なタイミングで換金する事が出来ないという点がある。

仮にその事業の期間が5年だとすると、5年後の対象不動産の地価がどうなっているかを考えねばならない。現在の不動産市況を見てみると、中国、アメリカ、ヨーロッパ、海外の不動産価格は、ほとんどが下落をしている。表立って(あくまで表立ってである)、下落という兆候が見られていないのは、日本だけなのである。

今後、日本も同様に地価は下落をすると考えるのであれば、始めの出資金は、額面を割れて返還されるという事になる。要は、高値掴みする投資になる可能性が高いという事である。そして、投資期間中に下落の兆候が見られたとしても、投資家は何もできず、出資したお金が棄損していくのをただただ見ているしかないのである。

それぞれの事業のリスクを見抜き、軽減する方法は?

幸い、この10年程度の日本の地価は上昇傾向であった為、今まで組成され、運用期間を終えたものは、家賃収入、節税、そして、売却益とこの投資のメリットをすべて享受できたわけであるが、不動産小口化商品は、その名の通り不動産投資であるわけで、不動産価格の下落で元本が、月々のわずかな収入程度では、カバーできない損失を負う事があることを頭に入れておかねばならない。これが、他の金融商品の株や投資信託と大きく違う点である。

では、どうしたらリスクを見抜き、減らす事が出来るのであろうか?

まずは、事業の財務管理報告書を確認すると共に、事業母体を調べる事が必要である。不動産小口化商品の投資では、投資家保護の為、出資金が正しく運用されていることを監視する監査会社がスキーム上あるのだが、その監査会社が事業者と同じ住所のケースもある。これは、事業者が出資金を集める為に単に体裁を整えただけにすぎず、実態は同じ会社であり、これでは出資者のお金が正しく監査されているとは言い難い。

又、広告で「低リスク」「預金感覚で」などとうたっているものもあるのだが、株式投資がミドルリスク・ミドルリターンの投資に分類されるのであれば、不動産小口化商品にはそれ以上のリスクが内在しているわけで、低リスクであるはずは無く、むしろ高リスク、と筆者は考えており、無論、預金感覚で行ってはいけないのは、説明したとおりである。

まだまだ黎明期である不動産小口化商品は、玉石混交である。故に、消去法にはなるが、破綻リスクが高い匿名組合型を避け、経営母体がしっかりしている事業者であるものを選び、且つ、投資対象の不動産の価値が下がらないと思われるものを選ぶ、これが不動産小口化商品の一つの選び方となるのではないだろうか。


240119ko_gam02.jpg

咲本 慶喜(さきもと・よしのぶ)

不動産会社GO STRAIGHT 代表取締役
国立埼玉大学経済学部卒。不動産業界に 30 年従事し現在に至る。投資マンションから借地底地までの幅広い不動産の売買、不動産活用のコンサルティングを行う。自らマンション・ビルを所有し、不動産投資を実行。自己所有の賃貸物件は独自のノウハウにより、常に100%近い稼働率を誇る。また、海外ファンドを購入するなど金融投資にも明るく、年間利回り数百%という驚異的な投資運用実績があり不動産と金融投資の両面のノウハウを持つ。

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中