「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル時代の新たな英語観「ELF(エルフ)」とは

ELFは「正しく話す」よりも「効果的に意思疎通する」ことに重きを置く発想(写真はイメージです) Rawpixel.com-Shutterstock
<「ネイティブのように話せるようになる」という目標が多くの英語学習者を挫折させてきた。地球上で英語を話す人の約75%がノンネイティブという今日、目指すべきは「完璧な英語」ではなく、今もっている英語力を効果的に使って、誰にでも「伝わるコミュニケーション」をすることだ。ノンネイティブの英語ユーザーが持つべき、ELFの視点とは?>
ELF(共通語としての英語)とは?──グローバル時代の新たな英語観
英語は「世界の共通語」とよく言われるが、その「共通語」とは具体的にどのようなものなのだろうか? 私たちが、世界中の人々と英語を使う時代に、従来の「ネイティブ英語を目指す」学習方法は、果たして最適なのだろうか。
この疑問に答えるのが、『ELF(English as a Lingua Franca=共通語としての英語)』という新しい考え方だ。2000年ごろにヨーロッパの社会言語学の研究分野として生まれ、エルフとよばれる。
ELFは、「異なる母語を持つ人々が意思疎通をするための共通語」としての英語に焦点を当てて、ネイティブ同士が使う「母語としての英語」と区別して考える。近年の研究によって、ELFが「アメリカやイギリスの英語」を理想とする英語とは異なる優先順位で使われていることが解明されてきた。
このELFの視点を持つと、私たちの英語の使い方や学び方の発想が大きく変わる。英語を「正しく話す」ことだけにとらわれず、多様な英語を使う相手と、「効果的に意思疎通する」ことを重視する発想へと転換できるのだ。
従来の英語教育では、正確な文法、発音、語彙を身につけ、ネイティブスピーカーのように話すことが理想とされてきた。しかし、実際には、多くのノンネイティブスピーカーはネイティブのように話せるようにはならないし、そもそも英語の使い方自体がネイティブとは異なる。
その理由は明解だ。私たちは、仕事、趣味、家庭など、日々の生活に多くの時間を費やしており、英語の学習に割ける時間は限られている。さらに、英語の上達には、長年にわたる英語を使う経験の積み重ねが必要であり、ネイティブレベルまで到達するのは現実的ではない。
それにもかかわらず、「英語はネイティブのように話せるべき」と考えると、多くの人が次のように感じてしまう。
「英語は難しすぎる」「とても自分には無理」「多少は話せるが恥ずかしいレベル」「人前では話す自信がない」──こうしたネガティブな感情をもってしまいがちだ。