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「SDGs全てに貢献できる唯一の産業」観光が21世紀のグローバルフォースと言われる理由

2024年3月12日(火)11時30分
※JICAトピックスより転載

西山 国連世界観光機関(UNWTO)※1によると、2000年の世界の海外旅行者数(国際観光到着数)は6億8千万人でしたが、コロナ前の2017年には13億29百万人に倍増しており、2030年には18億人に達するという予想もあります。観光開発は道路や電車などのインフラ整備、それに伴う雇用を生み出す側面もありますから、その国の経済開発に直結します。世良さんは「グローバルフォース」という言葉を聞いたことがありますか?

※1 国連世界観光機関(UNWTO)は2024年1月、組織名をUN Tourismに変更。(本取材は2023年12月に行いました)

世良 詳しくは知らないです。

西山 グローバルフォースとは「ある世紀を変えた力」のことです。例えば、20世紀のグローバルフォースは「石油」です。そして21世紀は「観光」になると言われています。観光は国をまたいで人が行き来しますから、草の根レベルでお互いの国を知り合い、理解が深まることで、安全保障の基盤となるともいえます。

世良 観光の持つ力が大きくなっているんですね。

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旅行好きでケニアなどを旅しているという世良マリカさん。2002年神奈川県生まれ。19年に芸能界入りし、モデル、タレントとして活動。史上最年少16歳で「ミス・ワールド2019日本代表」になる。慶應義塾大学総合政策学部に在籍している

海外の支援が日本のオーバーツーリズム解決のヒントに

浦野 JICAでは2019年からペルー北部の山岳地帯にあるチャチャポヤという文明が栄えた場所で観光開発を支援しています。ペルーは現在、南部のマチュピチュ、ナスカ、クスコに観光客が集まっていますが、北部の観光開発も進めば、バランスの取れた発展につながります。

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ウトゥクバンバ渓谷の断崖絶壁に置かれた棺。かつては疫病のリスクがある谷底を避け、人は高地(台地上)に住んだため、死の世界(地中)が露出しているように見える絶壁に棺を置き、死者に見守ってもらうという信仰の姿をとった(西山徳明さん提供)

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ペルー北部アンデス山岳地帯のウトゥクバンバ渓谷で5〜15世紀にチャチャポヤ文化が展開した。その信仰の中心となった標高3,000mの台地上にそびえるクエラップ遺跡(西山徳明さん提供)

浦野 ペルー政府からは当初「南部のマチュピチュは観光客が多すぎて、訪れた人々の満足度が下がっているため、違う地域も開発を進めたい。日本はバランスの取れた観光開発をしているから、その知見を活かして支援してほしい」という要望がありました。

そこでまさに映画インディ・ジョーンズのように北部のジャングルに、なたを振って分け入って現地調査をしたところ、出てきたのがインカ帝国の遺跡だったんですね。ほかにもアメリカ大陸でも有数の落差を誇る滝もありました。チャチャポヤ文明があったのはアマソナス州というペルーの中でも最貧州ですが、観光開発をすることで経済が活性化する可能性があるとわかったんです。

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多くの観光客が訪れるマチュピチュ(西山徳明さん提供)

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