最新記事

ドラマ

新ドラマ「ホイール・オブ・タイム」は「スローンズ」ほど不快でなく、奥深い

Not A New ‘Game of Thrones’

2022年1月14日(金)17時50分
レベッカ・ロング
『ホイール・オブ・タイム』

異能者のモイレインは竜王の再来を見つけるために、5人の候補と旅をしながらさまざまな試練を課す ©2021 AMAZON CONTENT SERVICES LLC AND SONY PICTURES TELEVISION INC.

<「おっぱいとドラゴンだけ」と言われた『ゲーム・オブ・スローンズ』とは一線を画したアマゾンの新ドラマ『ホイール・オブ・タイム』>

アマゾンプライム・ビデオで昨年11月に配信が始まった『ホイール・オブ・タイム』は、『ゲーム・オブ・スローンズ』風のファンタジー&流血バトルドラマだ。

その第1話が始まって20分頃、男女の入浴シーンがある。竜王の生まれ変わりを探す異能者モイレイン(ロザムンド・パイク)がゆったりと湯船につかっていると、彼女の護衛士ラン(ダニエル・ヘニー)が全裸で登場する。

ゆっくりと湯船に入ってくるラン。次の展開はもう分かった......とほとんどの視聴者は思うだろう。この手のドラマのお約束だ、と。

だが、モイレインとランは白濁した湯に向かい合ってつかり、旅の疲れを癒やすだけ。それぞれ天井を向いてリラックスしていると、全く別の場面に切り替わる。2人は極めて親しいけれど、あくまでプラトニックな関係であることを伝えるシーンだ。

うちにも『スローンズ』のような作品を

2016年に全世界への動画配信サービスを開始した当初、プライム・ビデオの独自制作コンテンツはコメディーや刑事ドラマが多かった。それを見たジェフ・ベゾスCEO(当時)は、もっと幅広い層をつかめるジャンルへのシフトを命じた。

ジャーナリストのブラッド・ストーンによる新著『アマゾン・アンバウンド』(未邦訳)によると、ベゾスは「うちにも『ゲーム・オブ・スローンズ』のような作品を」と大号令を掛けたという。

そこでアマゾンは17年、映画にもなった小説『指輪物語』のドラマ化権を獲得。さらに翌年には、米作家ロバート・ジョーダンの小説『時の車輪』(全14部)のドラマ化権を得た。それが『ホイール・オブ・タイム』だ。

壮大すぎる世界観を簡略化するために、ドラマでは原作を改変した部分も多い。企画・制作のレイフ・ジャドキンズは登場人物の年齢を上げ、複数の出来事をまとめ、厳粛なトーンを抑えた。その一方で、「時の車輪は数千年周期で繰り返される」という、物語の中核は変えていない。

かつての時代は男性が「絶対力」を振るっていたが、今はモイレインら女性の異能者がそれを握り、闇の勢力との終わりなき戦いに挑んでいる。また、かつての時代には竜王が闇王を破ったという記録があることから、異能者たちは、20年ほど前に生まれたとされる竜王の再来を探すことにする。ただし、それが男なのか女なのかは分からない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米高官、中国と北朝鮮巡り協議 強制送還への懸念表明

ワールド

トランプ氏、石油業界幹部に環境規制破棄を明言 10

ビジネス

英中銀、近いうちに利下げとの自信高まる=ピル氏

ワールド

ロシア軍の侵攻阻止可能、同盟国の武器供給拡大で=ウ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 3

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 4

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 5

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    「高齢者は粗食にしたほうがよい」は大間違い、肉を…

  • 10

    総選挙大勝、それでも韓国進歩派に走る深い断層線

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 9

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中