尿酸値14.8でも痛風にならない「プレミアムな患者」が医師から頼まれたこととは──
昔はウイスキーが苦手だったけど、いまはお酒自体がおいしくなったんでしょう。ハイボールも普通に飲めるようになった。自分が慣れたのではなく、昔の酒がまずかったんだと思うんです。
コロナ禍で、2年近く表立って酒が飲めない日が続きましたよね。そこで気がついたのは、もしかすると、自分はお酒が飲みたくてこの仕事してるんじゃないかって。
映画の現場って他のどんな仕事よりもお酒を飲むことに抵抗が少ない仕事だと思うんです。乱暴な言い方をすれば、飲もうと思えばいつでも飲める。朝からだって飲むことが許される。いや、飲まないけど。それが楽しいから、この仕事を辞めずここまできたんじゃないかって思います。最近は飲み会がなくて寂しいですよ。
「キャメラマンが痛風で来れません」では驚かない
そのせいなのか、この業界に痛風は多いですね。
「キャメラマンが痛風で来れません」という報告は何度も受けてますし、『隠し砦の三悪人』という作品を撮った時は、メインスタッフで自分以外はみんな痛風持ちでした。
押井守さんが2001年公開の『アヴァロン』という映画をポーランドで撮影したときは、初日から現地で痛風の発作が出て車椅子に乗って撮影をしたんですって。その時の写真も見たら車椅子に乗って銃撃戦の演出をしてて、まるで晩年のサム・ペキンパーみたいでカッコよかったですよ。
撮影のロケ車でも、先輩たちが痛風談義をしているのは日常茶飯事。痛風とぎっくり腰って、なんだか同情されるレベルが低いんですよね。ちょっと間抜けに聞こえるのでしょうか。
だから、若かった頃は、自分はああはなるまいって思っていたのを覚えています。まさか自分がそんな高尿酸値のポテンシャルの持ち主だとは思いもしませんでしたから。
新しい主治医はキビシイ系の女医
数カ月後、主治医の先生が留学して、担当が変わって女性医師になりました。
3カ月に1度、定期検診があるんですが、その先生がクラスに一人はいた理系女子そのままの見た目と話し方でね。おそらく日本の医学を革新するために必要な、データソースである私に、すごくぞんざいなタメ語で話してくるんですよ。もちろん私の生活が問題だらけだからなんですが。
「君、ぜんぜん数値がよくなってないじゃない」
ちょっとドライな言い方は、「痛風ごときで、私の手をわずらわせないで」という態度にしか私には見えなくて、自分の中の新たな扉が開きそうになってしまうのを感じました。