最新記事

私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】

横浜の和菓子店、上生菓子に一目ぼれした中国人店主の「おんがえし」

2020年2月6日(木)18時40分
宇佐美里圭(本誌記者)

RIKA USAMI-NEWSWEEK JAPAN

<横浜市鶴見区に「菓心 雪梅庵」という和菓子店がある。店主は2009年に来日し、修業を重ねてきた四川省出身の熊雪梅。だが彼女が自分の店を開くまでには大きなハードルがあった。本誌「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集より>

店内には美しく繊細な上生菓子だけでなく、キャラクターが描かれたパッケージや、面白いネーミングの和菓子、子供が好きそうなポップな色合いの和菓子まで多種多様な商品が並ぶ。「親しみやすくしたくて」と店主の熊雪梅(ゆう・せつばい、37歳)は言う。
20200204issue_cover200.jpg
四川省出身の熊が横浜市鶴見区に「菓心(かしん) 雪梅庵(ゆきうめあん)」を開いたのは2018年10月のこと。日本へ来ることを決めたのは「上生菓子を初めて見た瞬間だった」というから、和菓子への情熱は人一倍強い。

「昔は中国で事務員として働いていたけれど、あるとき日本人のお客さんが上生菓子をお土産に持ってきた。一目で美しさに心を奪われ、こんなものを自分も作れるようになりたいと、その場で仕事を辞める決心をした」

magSR200206chinese-yusetsubai-2.jpg

見事な上生菓子から、どら焼きやみかん大福といった和菓子までそろう。「生麦囃子サブレ」などご当地和菓子も RIKA USAMI-NEWSWEEK JAPAN

それから2年間、貯金をしながら日本語を学び、和菓子について下調べを進めた。来日したのは2009年。まず日本語を学ぶため、横浜市内の語学学校に入った。

2年間通うつもりだったが、1年で日本語検定1級に合格。卒業を促され、翌年に製菓専門学校へ入学した。そこでも優秀な成績を収め、奨学金を取得。学校のコンクールで賞を取ったこともある。

magSR200206chinese-yusetsubai-3.jpg

RIKA USAMI-NEWSWEEK JAPAN

どんなに優秀であっても、和菓子業界への就職となると外国人というだけでハードルが高くなる。

「就労ビザが下りないので、面接で断られる。何社も落ちて、ようやく中国進出を予定していた横浜の老舗和菓子店に就職できた」

magSR200206chinese-yusetsubai-4.jpg

RIKA USAMI-NEWSWEEK JAPAN

そこで4年間修業を積んでから、同業他社に転職。さらに和菓子にのめり込んでいった熊は、勉強会で出会った職人や製菓会社の社長のつてを頼り、修業の旅に出た。沖縄、静岡、名古屋、大阪、千葉......6軒の和菓子店に3日間ずつ泊まり込み、職人たちに教えを請うた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カナダ首相、米関税に対抗措置講じると表明 3日にも

ビジネス

米、中国からの小包関税免除廃止 トランプ氏が大統領

ワールド

トランプ氏支持率2期目で最低の43%、関税や情報管

ワールド

日本の相互関税24%、トランプ氏コメに言及 安倍元
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中