最新記事

メンタルヘルス

部下が適応障害? 親身に相談に乗り、仕事を減らしてあげるのが良い対応とは限らない

2021年3月2日(火)16時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

EmirMemedovski-iStock.

<もしも部下が適応障害になったら、どう接すればいいのか。上司の果たす役割は非常に大きいが、まずい対応を取ってしまう人は多い。心療内科医の森下克也氏は、まずい対応には4種類あると言う>

適応障害は、もはや珍しい病気ではない。あなたの会社や身の回りにも、心を病んでしまった人が1人や2人、いるのではないだろうか。

適応障害とは、外部環境にストレスとなる原因があり、それに長期間さらされることによって起こる、心と身体の病気のこと。「職場のうつ」と呼ばれることもある。

問題は、薬を服用しただけでは治らないことだ。それなのに、日本の精神医療はこの病気に十分に対応できていないと、心療内科医として、約30年にわたって適応障害の治療に当たってきた森下克也氏は言う。

「職場でのストレスによって心と身体が傷つき、病院にかかってはみたものの、単に薬を処方されるだけだったり、診断書をもらって休職に入ったはいいが、どう過ごすかについての指導はされないまま、といったことが日常的に起きています」

そのため森下氏は、『もしかして、適応障害?』(CCCメディアハウス)を当事者向けに上梓。そしてこのたび、その続編的な位置付けとなる『もし、部下が適応障害になったら』(CCCメディアハウス)を世に出した。

適応障害には、家族や友人など、当事者以外にも多くの人が関わっており、なかでも職場の上司の果たす役割が計り知れないほど大きいからだ。

「上司は部下の人生の一端を担っています」と、森下氏は言う。

「決して、上司に隷属を強いられる存在でもなければ、組織の部品でもありません。人間としての幸せを求め、そこにいるのです。その期待に応える義務が、上司にはあります。メンタルヘルスへの安全配慮義務が、法律で規定されている所以です」

適応障害とは、どういう病気なのか。部下が適応障害にかかってしまったとき、その兆候が見られたとき、上司は一体どう行動すればいいのか――。

具体的な事例も紹介しながら、分かりやすく書かれた『もし、部下が適応障害になったら』から、ここでは一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。

◇ ◇ ◇

上司がつい取りがちな、まずい対応

では、わが国の上司と言われる人たちは、部下のメンタルヘルス不全に対して、実際、どのように対応しているのでしょうか。

最近、あなたの周囲に、どうも様子のおかしい部下がいたとします。顔色が悪く、ミスを連発し、すっかり笑顔がなくなって、飲みに誘っても断ります。それでも勤怠に問題はなく、忙しい中、むしろ残業は増えています。

上司であるあなたは、「疲れているようだな」と気にして、声をかけます。でも、「大丈夫です」という答えしか返ってきません。あなたは気になっていますが、何の対策を講じることもなく、時間ばかりが過ぎていきます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国テンセント、第1四半期は予想上回る6%増収 広

ワールド

ロシア大統領府人事、プーチン氏側近パトルシェフ氏を

ビジネス

米4月卸売物価、前月比+0.5%で予想以上に加速 

ビジネス

米関税引き上げ、中国が強い不満表明 「断固とした措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 7

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中